窃盗で服役中 自由の身になれると言われ激戦地に「これは何のための戦争なのか分からない」
私たちは、捕虜に話を聞く機会を得ました。本人の意思を直接確認し、本心を聞くため、ウクライナ当局の担当者には席を外してもらいました。

捕虜になったロシア西部出身男性(23)
「私は刑務所に入っていました。そこに『ワグネル』の担当者が来て戦闘に参加するように勧めてきました」

「ワグネル」とは、ロシアの民間軍事会社で、その会社に誘われ、戦闘員になったと言います。ワグネルはロシア軍の兵員不足を補うため、金で雇った戦闘員をウクライナの前線に派遣しています。特にワグネルの戦闘員は激戦地に投入される傾向が強いと指摘されています。

ウクライナで戦ったワグネルの戦闘員が日本メディアの取材に応じるのは、これが初めて。男性は自動車窃盗の罪で服役中でしたが、月20万ルーブル(約36万円)の報酬で半年間戦闘に参加すれば、自由の身になれると言われたそうです。
捕虜になったワグネル戦闘員
「バフムトの近くに送られました。ウクライナ軍の陣地に突撃しなければなりませんでした。昼も夜も砲撃が続いていて兵士たちは常に戦闘を続けていました」

男性は、いま最も激しい戦闘が繰り広げられているウクライナ東部・バフムトで去年末までの3か月間、戦闘にあたったといいます。

捕虜になったワグネル戦闘員
「新年までにバフムトを占領しなければならないと言われたんです。私は負傷者を救助し、遺体を回収していました。最も多い日で1日40体の遺体を運びました。目の前で人が、友達が死んだ時は恐ろしかった。次に殺されるのは自分だといつも思っていました」
3か月間で目にした仲間の遺体は数千にのぼったと話します。毎日のように「逃げたい」と考えたものの、頭をよぎったのは仲間うちで語られていたこんな話でした。
捕虜になったワグネル戦闘員
「そんなことをしたら『銃で殺される』と。仲間も隊長も言っていました。与えられた任務をこなさなければならなかった。やるしかなかったのです」

男性はこれまで「ウクライナ政府がロシア語を話す住人を虐殺している」というロシアの言い分を信じていましたが、その考えにも変化があったと話します。

捕虜になったワグネル戦闘員
「これは何のための戦争なのか、わからない。罪のない子どもやお年寄り、民間人が死んでいるからです。早く終わってほしい。それだけです」

















