「慌てて避難すると階段から転げ落ちるなどして危険」「家具などの固定が理想」

 ―――2月1日から緊急地震速報の運用が変更され、長周期地震動階の「階級3」と「階級4」の揺れが予想される地域にも、緊急地震速報が発表されます。たとえば、東京で大きな地震が起きても、長周期地震動に関して大阪にも緊急地震速報が発表されるというケースも十分考えられます。この変更の意義を教えてください。
 「短周期の揺れはそれほど遠くには伝わらないんですね。東京を揺らす首都直下の短周期の揺れが、大阪をすごく揺らすかといえば、そうではありません。だけど東日本大震災の際に東北沖で起きた大地震の長周期地震動は、大阪の高層ビルを揺らしました(※東日本大震災時には、大阪・南港の咲洲庁舎でエレベーター停止による閉じ込めや、内装材の破損などが発生)。非常に大きな地震が起きて遠くまで伝わる時には、高層の建物にいる人たちに、あらかじめ『揺れが来ますよ』という警報を出してくれるわけで、準備ができる。数十秒、場合によっては数分、余裕を持って準備ができるというのは、非常に大きいです」

 ―――マンションやオフィスの室内にいる際に長周期地震動に揺れに見舞われた、あるいは揺れが迫っている場合は、どのような行動をとればいいのでしょうか?
 「基本的には短周期の揺れの場合と同じです。長周期地震動の揺れが来るぞという時には、超高層の建物自体は、耐震性は非常に高く、ビルが潰れるということはまず考えられないので、そのビルの中にとどまる。そして、安全性が高いところにとどまる。あらかじめ家具などがちゃんと固定されているのが理想です。何か落ちてきそうな時には、丈夫な机の下などにもぐって、じっと揺れが収まるまで我慢するというのが、まず取るべき行動ですね。また、長周期地震動の場合は、コピー機などキャスター付きのオフィス家具が大きく動き回るので注意が必要です。あまり構造的に強くない壁は変形して、ドアが開かなくなってしまうことも考えられます。なので、長周期地震動の揺れが来るぞという時には、ドアをあらかじめ開けておくのも望ましいです。それから、場合によっては火を使っている場合は、揺れが来る前であれば消した方がいいですね。普通、短周期の揺れだとセンサーでガスは止まるはずですが、長周期地震動の際は、場合によっては止まらない可能性があって、油が漏れる可能性もあります。このように、長周期地震動ならではの対策もありますが、基本的には通常の地震と同じです。揺れが収まるまで安全な場所でじっと我慢する。慌てて避難すると階段から転げ落ちるなどして危険です。可能であれば警備員などが館内放送で『揺れが来るので安全な場所で待機してください』とアナウンスしてほしいですね」

 ―――商業施設内にいる場合でも基本的には同じですか?
 「同じです。 超高層ビルはよく揺れるということを覚えておいていただけたらと思います。超高層ビルは安全なのですが、大きく揺れて、人間のスケールから言うと“とんでもなく揺れている”と感じられる時もあります。何十cm、場合によっては1m、2m揺れるので、人間のスケールから言うとすごく大きく揺れるということをよく知っておいていただければと。けれども、対策すればそんなに怖いことはないので、十分に対策して安心感を持って、揺れが収まるまでその場で待機していただきたいと思います」


 ―――想像しているよりも大きな揺れと考えた方がいいでしょうか? “船に乗っているような大揺れ”などにたとえられることもありますが?
 「普段は経験しない揺れなので、何も準備もなく心構えもなく経験すると、ちょっとびっくりすると思います。相当大きく揺れるし、音もすごいんですね。ガシャガシャガシャガシャするし。なので、知識がないと少しパニックを起こして、慌てて非常階段で下りようとして、揺れで階段を踏み外してけがをするケースもあります。そのような行動のほうがかえって危ないですし、屋外に出ると落下物がもっと危ないですから。タイルが落ちてくるおそれもあるんですよね。そちらのほうがよほど危ないので、慌てて外に出ない方がいいです」

 ―――エレベーターの中で揺れに見舞われた場合はどうすればいいでしょうか?
 「地震の際は最寄り階で自動停止するエレベーターも多いですが、長周期地震動はちょっと違う揺れ方なので、場合によっては止まらないエレベーターもあります。最近は長周期地震動に対応するエレベーターもあるのですが、緊急地震速報が発表されたり、揺れを感じ始めたりしたら、すぐにボタンを押して最寄り階に止まるようにする。ドアが開いたらすぐに外に出る。万が一閉じ込められたら、インターホンで警備員を呼んで対応を待つということですね。場合によっては長時間救助できない場合もありますので、エレベーターの中に水・食糧・携帯トイレなどを準備しておくことも望ましいです」