高層ビルの屋上や上層階に置かれる「制震装置」

―――各建設メーカーが長周期地震動の揺れを少しでも低減させるための技術開発を進めていますが、制震装置をあえて屋上や上層階に置くという技術が注目されています。これは合理的なのでしょうか?
「長周期地震動対策としては、もう既に建っているビルに制震補強を施すことが必要になってくるわけですが、典型的なのは、たとえば『ブレース』という斜めの部材を入れる方法です。けれども、『ブレース』などを後から付けるとなると、例えば空調などの設備が既にあってスペースがないという場合があります。それと、やっぱり“どかないといけない”んですね。もう既にテナントや住民がいる中で、“工事のためにしばらくの間、退去してください“というのは、大変な工程になってしまいます。けれども屋上に制震装置を置くと、そこだけで工事が完結するので、テナントや住民の退去が不要になり、非常に効率的に工事ができます。なので、制震装置を“上”に置く形式は最近増えてきています。『いながら補強』という言い方もされていますね。そのビルでの活動を止めることなく工事ができるので、非常に効率的だということで注目されています」


―――実際にメカニズム面でも揺れを抑えることができるのですか?
「慣性力といって、加速度を受けた際にモノがその場に残ろうとする力を利用します。建物は“動こう、動こう”とする一方、重いおもりを備えた制震装置は慣性力で“残ろう、残ろう”として、揺れ始めが遅くなります。そうすると、制震装置と建物が“逆方向に揺れる”構造が生まれ、揺れが抑えられます」