「空振りとなるケースもあるが、役に立つ情報」

 ―――これまで学界や行政の中で、“緊急地震速報の運用を長周期地震動にも対応できるものに早急にすべきだ”という声は大きく上がっていたのでしょうか? そのあたりの現状を教えてください。
 「やはり関係者は、長周期地震動の揺れが予想される場合もぜひ緊急地震速報を出すべきだと言っていました。ただ、地震後は津波の情報をはじめ様々な情報であふれます。長周期地震動の影響を受けるのは全ての建物ではなく、高層建築という特殊な建物なわけです。“命の危険がすぐそこに迫っていると伝えるわけではない情報を出すべきか”という考え方や、“たくさんの情報がある時にかえって混乱を招かないか““関係のない人が大勢いる中で、一部の人のための情報を全国的に流すべきなのか”といった様々な考え方があった上で、“だけどやった方がいい”という合意が取れたということだと思います」

 ―――そうした合意に至った大きな要因は何でしょうか?
 「南海トラフや日本海溝・千島海溝で大きな地震が起きたら、間違いなく長周期地震動がやって来るので、“長周期地震動を緊急地震速報の対象にしておくべきだった”という事態になる前に、有効な情報はやはり発表しようと。あまり関係がない人がたくさんいるのも確かです。けれど高層の建物にいて、特に上層階にいる方は、あらかじめその情報が来たらしっかり使えるようにしておくということが重要だと思います。理想的には、個々のビルのために情報を送ってくれる民間のサービスもあるので、可能であれば併用してほしいですね。そのビルの周期に合わせて、どのように揺れるのかについてそのビルに合わせた情報を出してくれるので、緊急地震速報と合わせて、そうした民間のサービスも使えば、より的確な精度の高い情報を得ることができると思います」

 ―――2月1日から長周期地震動の「階級3」「階級4」が緊急地震速報の対象に追加されたことは、久田教授は肯定的に評価していますか?
 「もちろん肯定的に評価しています。空振りとなるケースもありますが、役に立つ情報でありますし。重要なのは、そうした情報を使って、個人だけではなくて、隣同士が助けるということですね。特に高層階は誰も助けに行けないです。エレベーターは止まるし、連絡もほぼできなくなる状況で、誰が助けてくれるかと言えば、やはり『共助』、隣近所の人が助けるしかないんですね。隣同士の人が声をかけ合ってやるしかないんです。火事でない限りはすぐに避難するのではなく、まずは同じフロアの人たち同士で『大丈夫ですか?』と声をかけあって、安否確認をしてほしいです。『自助』と『共助』というのは共通ですから」