◇ひとりで認知症の母を介護 幻覚、妄想…追い詰められていく被告

森松被告の母親は、2017年ごろから寝たきり状態になり、2020年ごろからは、高度の認知症となっていた。
その介護を続け、通院に付き添うなどの介助をしていた森松被告だが、ストレスから体調を崩してしまう。
妹も同居していたが、統合失調症を患っていて働くことができない状態で、母親の介護を任せられる状態ではなかった。

森松被告の精神状態は次第に追い詰められていく。
犯行の1か月ほど前には、自身も統合失調症を発症。

「暴力団に監視されている」「待ち伏せされて殺される」など幻覚や妄想に取りつかれるようになる。
夜中、知人に電話をして相談するようになるが、やがて知人に電話も繋がらなくなり、失望を深めていく。

犯行当日の6月9日、森松被告は自殺を考えるまでに追い詰められる。
当初は1人で死ぬつもりだったが「母親の面倒をみることはできない」と答えた無職の妹、そして寝たきり状態の母親を残して死ぬことはできないと考え、3人で心中することを決意する。

◇「私を先に刺してください」しかし妹を刺すことはできず

仏間に置かれていた新聞紙の束を手に台所の流し台の近くまで移動、火を付けた。火事を起こし死のうと考えたのだ。しかし火はすぐに消えてしまう。

次に首を吊ることを考え付く。
延長コードを天井から吊るし、輪にして、そこに自らの首を通したが、思い留まった。
今度は包丁で自らの胸に刺そうしたが、妹から「私を先に刺してください」と言われ断念する。
「かわいそう」だと感じ、妹を刺すことはできなかった。

上手くいかないことに焦りを深めた森松被告は、ガスでの窒息死を思い付き、台所のガス栓を開ける。
次第に充満するガス。しかし一向に体調に変化が訪れない。
窒息死もできないと悟った森松被告は、充満しているガスを爆発させて死ぬことにした。

ライターを顔の前辺りに持ち上げ、火を付けた――。