1月24日、松山地裁で行われた裁判員裁判で、自宅に火をつけて同居していた母親を焼死させたとして、現住建造物等放火と殺人の罪に問われている男に、判決が言い渡された。
「被告人を懲役6年に処する」
現住建造物等放火罪と殺人罪の罰則はいずれも「5年以上の懲役か、死刑や無期懲役」と規定されている重大な犯罪だ。
法務省の統計によると、殺人罪の場合判決の量刑は「懲役11~15年以下」が最も多く、現住建造物等放火は「懲役5年以下」がいわゆる「相場」となっている。これは裁判員裁判であっても同様の傾向だ。2つの罪に問われた男に言い渡された判決の理由は、裁判の中で明らかとなった。

「母ちゃんを殺すつもりはなかった」
現住建造物等放火と殺人の罪に問われた森松良和被告(59)は初公判で、裁判長から起訴内容を認めるかどうかを問われ、その「故意性」を否認した。
◇「痛ましい火事」から一転…

事件は、愛媛県今治市で2021年6月9日に発生した。森松被告の家から火が出ていると、近隣の住民が消防に通報。火は約2時間後に鎮火したが、家は全焼。焼け跡から当時92歳だった森松被告の母親の遺体が見つかった。この家には、森松被告と母親、妹の3人が暮らしていた。この火事で、森松被告と妹もけがをして病院に搬送された。
一家3人が死傷した“痛ましい火事”は発生から3か月後、急展開する。
同年9月、自宅に放火して母親を殺害した容疑者として森松被告が逮捕されたのだ。
「優しくて息子を頼りにしているみたいで『息子がいないといかんのよ』と、病院へもしょっちゅう、雨が降っても車いすに乗せて傘をさして本当によくしていた」
「おとなしい感じの人で、何かで声を荒らげたりしない、だからびっくりした」
母親の世話をする森松被告の姿を日常的に目撃していたという近隣住民は、「息子」の犯行に驚きを隠さなかった。
検察は同年10月から約3か月間、森松被告の鑑定留置を実施。
その結果、責任能力に問えると判断し、森松被告を現住建造物等放火と殺人の罪で起訴した。
それから約1年後、2023年1月10日から始まった裁判で、犯行に至る経緯が見えてきた。