世代を超え苦しめる生きづらさ 孫まで連鎖する“戦争トラウマ”

“戦争トラウマ”の苦しみは世代を超え、子どもからさらに孫にも連鎖している。

旧日本軍兵士の孫、石井みきこさん(41)は2023年、医師から「複雑性PTSD」と診断され、今も自宅に引きこもる生活を続けている。

石井さんは幼い頃、母親に暴力を振るう父親の姿をよく目撃したという。

石井みきこさん(41)
「いわゆる面前DV(母親への暴力)。いつ暴力が起こるかわからない緊張状態は無意識ながらもあった」

父親の暴力は、幼い石井さんにとって恐怖でしかなかった。その気持ちは大人になっても拭いきれず、生きづらさに苦しみ続けた。

そんな中、親戚との会話で、父親が祖父から軍隊で行うような暴力を度々受けていたことを知った。

石井みきこさん(41)
「連帯責任をとらせて1列に並べて顔をビンタする。祖父は戦後、自分の子供たちに懲罰として行っていたようで」

父親の暴力は、祖父の代から続く“戦争トラウマ”によるものかもしれない。

そう考えるようになった石井さんは、祖父の軍歴書を取り寄せた。
すると終戦の前の年、鹿児島の守備隊で敵の上陸を阻止する決死作戦の訓練を受けていたことがわかった。

石井みきこさん(41)
「祖父が実際にやったことを突き合わせると、すごく腑に落ちた。訓練を受ける軍隊の中で、祖父は心を壊されていたんじゃないかと」

“戦争トラウマ”を研究する専門家は…

上智大学 中村江里 准教授
「重度のアルコール依存症や、精神科での治療が必要な方でも治療を受けていないケースが非常に多い。戦争の影響がいかに長く続くのか」

生きづらさの原因が戦争に由来していると思えたことで、少しずつ気持ちが楽になれた石井さん。

2026年、同じ経験を持つ人たちと悩みを共有するため、戦争トラウマ三世の会「『もやもや』を語る・聞きあう会」を立ち上げた。

こうして語り合うことが、心の支えになっている。

石井みきこさん(41)
「自分の今の生きづらさが、2世代前の戦争から始まった家族の苦しみだとどこにも情報がなくて、正体不明ということほど人を苦しめることはない」