魔法使いも乗車する「ミッドナイトタクシー」

田幸 「ミッドナイトタクシー」(NHK)が不思議な味わいでした。兵藤るりさんの脚本が優れています。タクシーの中という限られた空間、時間で出会う乗客とのやりとりで、それぞれの人生が交錯していく。古川琴音さん演じる主人公のドライバーは淡々としていて、感情が表情に出ない。受け答えも淡々としている。だけど、この人と会うと、なぜか乗客はしゃべってしまったり、この夜が忘れられない時間になるといった作品です。

乗客から聞いたことによって、主人公自身も変わっていく。タクシー内の空間と、タクシーをおりてからの日常のつなぎ方も上手ですし、乗客同士がちょっとずつリンクしていく構成もおもしろい。中にはワーホリで「地球に来ている」男性まで出てくる。

影山 あれは面白かったね。

倉田 古川さんの演技がすばらしい。たたずまいとか、ちょっとした表情の変化だけで引きつけられて、俳優さんになるべくしてなった方だと思います。

タクシーの乗客の中に魔法使いが出てきたりするんですよね。私は最初、若い男性2人が魔法使いだというのは、そういう設定の劇団員とかが乗ってきたんだなと思っていたんです。

影山 思いますよね。

倉田 ところが見ていくうちに、あっ、魔法使いで通すんだ!という驚きもありつつ、でも主人公の醸し出す雰囲気と相まって、魔法使いだってタクシーに乗るよなと妙に説得されたりする。

あと、やきいもの屋台を追いかけてほしいというエピソードも、普通にありそうですけど、よくよく考えたらそんなことないんじゃないかと思ったりする。そういうのもひっくるめて、ドラマはありそうでないものを提示する。そこを楽しむという楽しみ方ですよね。

後半になって、人の役に立つというテーマが出てきました。主人公が自分は何のために仕事をしているんだろうと思う話の流れになっていく。

私も何のために仕事しているかといったら、もちろん生活のためもありますが、やはり人の役に立つことで、自己肯定感が満たされる。人の役に立つことが、自分のためにもなる。ただドライバーと乗客の交流を描いて、不思議な世界を映し出していくだけではなく、その点を問いかけて、深みが増してきているので、楽しみに見ている作品です。

影山 おしゃれですよね。音楽も映像も。さらに乗客を中心に続々と出てくるゲストも30人を数えるらしいです。

田幸 ぜいたくですね。

影山 ぜいたく極まりないというか。そんなに出ますかと。1回こっきりかなと思った人物にも様々な背景があって、二度、三度、出てきそうですし。

古川さんのおばの和久井映見さん、それから行きつけの喫茶店のマスターの竹中直人さん。実は古川さんをタクシーの世界に導いた元ドライバーですが、この2人の、主人公に対するさりげない見守り方が、大好きです。