選んだのに試合に出られない選手とのコミュ二ケーションの取り方

栗山監督:
今、僕が迷っているのは、代表に入るか入らないかっていう線上にいる選手がいて、この決断ってもちろんいろいろなシミュレーションをしながら「こうなったらこうだこうだ」。それでも情の部分というか、感情の部分で「こいつ入れてやりてえな」みたいなのあるじゃないですか。それってどう処理してるんですか?

森保監督:
めちゃくちゃありましたというか、毎回あります、代表の活動ごとに。一番大切にしているところはチームファーストで決めるという。そこは信念を持って、決めていこうということで。チームファーストが選手ファーストになり…すみません、ファーストがいっぱいあってあれなんですけど(笑)。
チームファーストが日本ファーストにもなるっていう。「チームのために」が選手のために、「チームのために」が日本のために、となる選択をできるように、ということで考えてます。私一人だけで選手の選考をしてないですし、全体的にはコーチと何度もディスカッションをしながら、普段の視察してきたこと、活動してきたことを総合的に考えて決めていくので。だんだん最終的に何人かってなった時には監督案件になってくる。

栗山監督:
例えば柴崎(岳)選手、今回出場がなかったじゃないですか。あれ、起こると思うですよ、野球でも。選んだんですけど、なかなか試合に出られなかった。そういう時ってコミュニケーションとか言葉のかけ方とか。選手も分かっていると思うんですね。この戦いの中で自分が出るんじゃない。そういう時って、どういう…どうしたらいいんですかね?

森保監督:
そうですね、普段のトレーニングであったり、トレーニング以外のオフザピッチのところで、自然とこう、コミュニケーションを取ることはやっているかなと思いますし、試合には今回使わはなかったですけど、使えなかったですけど、トレーニングでやってる時の様子であったりっていうことはそこで話をしながらっていうこともあります。監督として話せる範囲で、なぜ使わないか、優先順位が違う選手にあるかっていうことは本人にも、そこはストレートに話して。

栗山監督:
そうですか。

森保監督:
はい。もう本当にキャラクターとしても彼は試合に出てたとしても出れなかったとしても、チームのためにこう戦ってくれるっていうことは、これまでの活動であったり、コミュニケーションを取る中でそこを見せてくれてる、感じさせてくれてるところがあるので、今回もそうですね。悪いなとは思いながらも、出場ということをさせてあげられなかったんですけど、チームのために必要だと思って招集させてもらってます。

栗山監督:
一番苦しいのは監督。監督が選んで、出してやりたい、こう活躍させてやりたいと思ってるんですけど、勝つために行かなきゃいけない。それって周りはいろんなこと言うんですけど、監督にしかその苦しさって分からなくて。でも一生懸命ベンチでそういう姿を見せてくれると、何か監督の人柄だったり、言葉だったりが伝わってて、悔しいけど、それをそこに置いて一生懸命やってくれる。でも、それってすごく難しい、簡単なことではないと僕も思っていて。でも今、お聞きして、やっぱり自分のタイプはこうで、今チームがこうだってはっきり言った方がいいんだっていうのは、なるほどなってすごく思いました。どうしても自分が一緒にずっとやってる選手ではないので、代表の選手っていうのは。普段やっていれば、こいつはこういう風に言った方がいいなとか、言わない方がいいとか分かるんですけど、僕何か今、すごく変なことをすごく参考に多分、これ野球でも起こるんで選んでるんですけど、勝つためにやるので、監督の仕事って勝つことが正義なので。これが誠意ですよね。選手に対してJAPANは。

森保監督:
おっしゃる通りです。

栗山監督:
だからそこって多分それで自分が苦しむだろうなって想像があったので、すみませんちょっとお聞きしてしまったんですけど。

森保監督:
でもという言い方がいいかどうかは分からないですけど、多分、日本ハムの監督をやられているときも、それをずっとやってこられたんですよね。

栗山監督:
そうですね。

森保監督:
普段というか、これまで栗山監督がやられていたことを評価されて代表の監督だと思うので、そのまま続けていただけたら成功する方なんだろうなと思って。

栗山監督:
自分らしくやっぱりやった方が自分らしく。

森保監督:
と思ってます。栗山監督がすごく言葉の引き出しを持ってる方だと思いますし、すごく賢い方だというのはすごくわかるので、全く私とはタイプが違うと思うんですけど、私自身いつも思っているのは、作った自分を選手に見せても、多分選手には伝わらないだろうなって思っているので、その状況、状態に合わせて自分が素直にこう感じていることを選手たちもこうぶつけていった方がいいかなっていうのを思ってます。


WBCは先行逃げ切りで 

栗山監督:
いやいや、もう僕は物凄く勉強になりましたし、何か心は定まった感じもあるし、もう一つだけ。野球でもそうなんですけど、例えば終盤にピッチャーは良くなっていく、リードして逃げられればいいですけど、サッカーでもそうですよね。
先に行って逃げ切れるだけの力があるなら逃げ切った方がいい。ところが、先に点を1点じゃなくて、たくさん取られちゃうと試合展開が計算できなくなる、野球もそうなんですね。初回に5点ぐらい取られちゃうと、もう打つだけしかなくなっちゃうから難しくなる。で、今回の戦いを見ていると、これは素人で申し訳ないです。本当に前半、我慢しておいて、とにかく我慢しまくって最後勝負を仕掛けるんだっていう風にちょっと僕には見えてたんですが、それって間違ってないですか。

森保監督:
そのプランだったんです。理想は先行逃げ切り。

栗山監督:
理想は先行逃げ切りなんですか。

森保監督:
ですね。で、そうやってあの入りは思い切ってぶつかりに行って、そこから様子を見て、戦おうということになった時に、やはり相手の方が勢いというか。パワーはいいなという前半が、やはりドイツ戦だったり、スペイン戦だったと思うんですよね。

栗山監督:
なるほど。

森保監督:
で戦って、そこはもう我慢強く戦いながら最後試合をものにしていくっていう考え方で、陸上で言うと100mのパワーで戦うよりもマラソン型で戦った方が、今回の日本のパワーと良さを引き出して最後勝つ確率が上がるのではないのかなっていう考え方でした。

栗山監督:
でも、それはいろんな想定の中で相手を探り合いながら、やっぱりこういう感じなんだって一つの方向に向かっていくことだったということですね。

森保監督:
で、選手たちも試合のプランは持って入って行けっていうことではありますけど、あれってやっぱここは我慢しながら戦った方がいいなっていうのは、選手自身がピッチに立った時に感じてくれて、もっと最初はガツガツ打ち合いに行く予定。

栗山監督:
そういうイメージもあったんですね。

森保監督:
ありましたけど。でもそうじゃなかった時ははっきり判断を変えるようにということは、キャプテンを中心にピッチ内の選手がやってくれたところではありますね。はい。

栗山監督:
いや、それをちょっとお聞きしたくて、WBCでも先に行きたいんですよね。先に行きたいけど、先にピッチャーで後ろの方のピッチャーが力が仮に落ちるんだと、最後やられる可能性もあるじゃないですか相手が強ければ。ところがこっちが上回っていればすうって行くんだと思うんですけど、あそこは両パターン、本当は先に行きたかったんですね。

森保監督:
もう先行にぎり逃げ切りで、受け身の時間のない方がいいくらいだった。

栗山監督:
いや、そうかなと思ってたんで。いやそれだけをお聞きできたんでそれを参考に行ってきます。