喜びと悲しみが入り混じる死刑囚の棟
<冬至堅太郎の日記 1949年2月11日金曜日>
午後、十八名のうち十名だけが出て行った。部屋を一つ一つ回って別れの挨拶を交わしてゆく。壁一重の差が生と死の違いとなって別れる。出てゆく人の顔は残る者への同情、悲しい心残りでくもっている。それに比べて残る人の方が許された人への喜びで明るくさえ見える。私はこの反対の表情の中に日本人の本当の姿を見ることが出来たと思った。
昨夜連れ出された8人の人は今晩、死刑が行われるらしい。昨日今日(また明日も許されてゆくだろう)人の動きははげしい。或る人たちは死へ、或る人たちは生へ、それぞれの運命によって別れてゆく。残るものは残るもので、この中の生活を続ける。人間として最大の悲しみと喜びとが激しく入り混じって、しかも何という静かな世界であろう。死につく人も静かに出ていった。減刑になった人たちも静かに去って行く。残った者は双方の悲しさと喜びとを抱きながら、人生の不思議さ、深酷さに目をとじて考えをこらすのである。
















