炎の中で助けを呼ぶ声が…
必死に火を食い止めていると、「助けて!」と叫ぶ声があった。炎に包まれた家に、老女がひとり取り残されていた。
周囲の住民らは、あまりの火勢に恐れをなし、誰も助けようとする者はいなかったという。
その時、3人の囚人が迷わず炎の中へ飛び込んだ。 彼らはすぐに煙に巻かれ、姿が見えなくなった。
人々が「ああ、3人もろとも灰になってしまうのか…」と固唾を飲んで見守る中、やがて3人は老女を抱えて炎の中から生還した。老女の命に別状はなかった。
国事犯や一般の囚人らが力を合わせた命がけの活動で火災は鎮火。
当時の新聞は、「監獄があったおかげで不思議な幸福があった。彼らの行動に住民はみな深く感銘を受けていた」と記した。
この時、消火活動に特に尽力したとして、国事犯の石原近秀、池田兼長、東郷七之丞の3名らが減刑となっている。
3人の経歴 実戦を生き延びてきた強者たち
彼らもまた西南戦争で部隊の指揮などにあたり、実戦をくぐり抜けてきた強者たちだった。
石原近秀:西南戦争では振武第十一番中隊長。政府軍の兵百余名を倒した百引の戦いを現場で指揮。
池田兼長:破竹一番中隊長などを歴任。熊本攻城戦から各地の防衛戦まで、最前線で部隊を率い続けた指揮官。
東郷七之丞:西郷軍の大小荷駄掛(兵站責任者)として、戦場での物資輸送や補給を担った。
七士たちはこの活躍を見ることはできなかったが、彼らの仲間が見せたこの行動こそが、彼らが単なる「反逆者」ではなく、義に厚い薩摩武士であったことを物語っている。

















