米国次第で「円安バイアスが強くなる」

ニッセイ基礎研究所の矢嶋さんも、市場が考える6、7月の利上げが早まれば、「円高のバイアスは確かに強くなるかもしれない」とする一方で、“円安のバイアス”が強くなる可能性も口にする。

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「アメリカが利下げして金利差が縮小しているにも関わらず、円高にならないということを考えると、26年にもしアメリカの利下げ観測がなくなったときに、円安のバイアスはもっと強くなるだろう。日本銀行や日本サイドでできる話で、26年の前半をどうするかは結構大きい」

2026年の「物価」「賃上げ」どうなる?

では、2026年の物価や経済の情勢はどうなっていくのだろうか。

ニッセイ基礎研究所の予測では、【消費者物価指数の上昇率】はこれまでの急激な上昇から緩やかに低下し、26年にかけて2%前後で安定する見込みだ。

『ニッセイ基礎研究所』矢嶋康次さん:
「これは制度的要因が大きい。経済対策で電気料金など色々下げるので、ここずっと続いていた3%ぐらいから2%ぐらいまでには落ちていくのではという予測」

そして【賃上げ】は、25年の5.25%に続き26年も高水準が維持される見込みだ。

<春闘賃上げ率 2026年予測>
▼予想が高い8機関⇒5.33%
▼予想が低い8機関⇒4.50%
▼平均⇒4.88%

※日本経済研究センターより

矢嶋さん:
「5%ぐらいの賃上げというのは過去から見ても非常に高く、日本全体の賃金に置き換えると大体2%ぐらい。なので消費者物価指数が2%ぐらいになるとすると、実質賃金がプラスになる期待もある。ただ問題になるのは、高市政権の“インフレ許容”で消費者物価指数に上方バイアスがかかる点。また、わずかな実質賃金のプラスなら『インフレをもう少し何とかして欲しい』という声があがる。価格低下の対策をやればやるほど需要喚起になってインフレ率が上がるという矛盾が出てくるので、これをどうするか」

――高市総理の国会答弁など聞いてると、物価を下げることよりも、それ以上に成長すればいいと。そちらに力点がある

矢嶋さん:
「高市さんは、供給を何としても上げないと日本は強くならないと。それは正しいと思う。インフレを許容して経済をもっともっと熱くさせれば、民間は設備・人手不足対策をやるし、個人はより賃金の高くて生産性の高いところに移動して結果として日本は供給力が高くなるというのを目指している。ただインフレを許容するので、『インフレ対策をやってくれ』という話と真逆の方向に経済政策を振っているということ」