“共同謀議”を狙った発表で幕田の名前を強調
いずれの記事も、11月21日に第八軍渉外部が発表した内容を報じたものだが、朝日新聞の見出しに象徴されるように、米軍の発表で強調されたのは、捕虜を殺害したことよりも、遺体を刺突訓練の的にして大勢で突いたという残虐性だったようだ。毎日新聞の記事には「遺体の毀損(きそん)や冒涜(ぼうとく)」の罪は書かれていても殺人罪の文字すらない。さらに司令の井上大佐の命令により、遺体を掘り起こして焼き、海に流すという隠ぺい工作をしたことで米軍の怒りが増幅しているようにみえる。
殺害だけでなく遺体を冒涜(ぼうとく)したことを重く見た米軍は、刺突訓練に参加した末端の兵も全員、死刑にするために、軍の系統に基づいた命令ではなく、自分たちで勝手に「共同謀議」をして殺害したという筋書きを作って裁判を進めた。そして実際、一審では41人に死刑が宣告された。
ほかの事件では、命令した者よりも命令された実行役の量刑は軽く、処刑の方法が正規の処刑方法である銃殺であれば、実行役は無罪となったケースもあった。共同謀議を成立させるために、命令系統の上位にあり捕虜処刑を決めた井上大佐ではなく、幕田大尉が矢面に立たされた感がある。
















