漂着ごみは対馬市が回収・処分して民間がリサイクル

対馬は南北82キロ、東西18キロの細長い島で、海岸線の長さは930キロにも及ぶ。30年ほど前から海岸にごみが目立つようになった。その量は増えることはあっても減ることはない。海洋生物や海岸の植物への悪影響や、漁業被害、さらにはナノプラスチックを体内に取りこんだ魚を食べることによる人体への影響も考えられる。

対馬市のリアス海岸

海外からのごみは、対馬海流と季節風の影響で1年中漂着している。しかし、越高海岸のように海岸線付近まで道路が伸びていて、陸から人が近づける場所はごくわずかしかなく、それ以外の海岸には、越高海岸以上に大量のごみが集まっている。

市内の海岸に漂着したごみ(対馬市提供)

こうしたごみの回収は、ボランティアの活動だけでは追いつかない。対馬市は船でしか行けない約150の海岸でのごみ回収を漁協に業務委託している。集めたごみは対馬クリーンセンター中部中継所で市が処理する。回収や処理にかかる費用は年間2億9000万円ほどで、そのうち9割は国から補助を受けている。

市が年間に回収できているごみの量は、1トン用のフレコンバッグで8000袋から9000袋分。ピーク時には夥しい量のフレコンバッグが中部中継所に集まってくる。

集められたフレコンバッグ(対馬市提供)        

ごみの内訳は10年間の平均で、発泡スチロールが34%、ポリタンクなどのプラスチックが24%、魚網などが10%を占める。対馬市未来環境部環境対策課の福島利弥さんは、処理の方法を次のように説明する。

「発泡スチロールは汚れている部分を削り、機械を使って50分の1に圧縮して、電化製品の部品や緩衝材などに使われる素材にリサイクルしています。プラスチックは破砕機でチップ状にします。チップのリサイクルは企業の協力で2022年から始まっていて、樹脂ペレット(プラスチック製品を製造するための、直径数ミリ程度の小粒状の原料)に加工されたうえで、買い物かごやボールペン、フリスビーなどにリサイクルされています」

対馬市未来環境部環境対策課 福島利弥さん

市が導入したのは圧縮に使う機械と破砕機だけで、あとは人の手によって分別し、リサイクルできないものは埋め立て処分をしている。海水を含み、劣化も進んでいるごみについてはリサイクルが難しいため、埋め立てるごみの量は年間1800立方メートルに及ぶ。

福島さんによると、市で圧縮や破砕を行っているのはリサイクルのためだけではなく、処理費用が安く抑えられるからだという。

「1トンのフレコンバッグを島内で埋め立て処理する場合、1袋あたり1万円かかります。ポリタンクをそのままフレコンバッグに詰めたら多くても1袋に25個、重さ20キロ分しか入りませんが、破砕してチップにすれば500キロ分を1袋に入れることができます。500キロ分の処理費用が、破砕することによって25万円から1万円に削減できます。特別なことをしているわけではありませんが、大量に漂着するごみをいかに経費削減しながら処理するかを考えています」