対馬の現状を多くの人に知ってもらいたい
市によるもう一つの大きな取り組みが、企業や団体と協力することだ。市では海洋ごみが漂着する現場を見てもらうとともに、合わせて対馬の歴史や文化、自然について知ってもらうスタディツアーを、一般社団法人対馬CAPPAとともに受け入れている。企業が研修として参加するケースも多く、2024年は89団体が参加した。
スタディツアーに参加したことがきっかけで、ごみ拾いのボランティアを継続する企業や、ごみをリサイクルした素材で商品を開発している企業もある。
学生団体のIVUSAも最初はスタディツアーで参加したあと、定期的にボランティアに訪れるようになった。福島さんは漂着するごみ自体を減らす方法がない中では、対馬の現状を知る人を増やすことが重要だと話している。
「大量のごみが漂着している対馬の現状を、とにかく多くの人に知ってもらいたいです。韓国の方は目の前の大量のごみを見て『韓国のごみがこんなに来ているなんて知らなかった』と驚かれます。現状を知って発信してもらえれば、もう対馬の関係者みたいなものですよね。一方で、国内の方にごみを捨てないようにしましょうと呼びかけても、対馬のごみが減るわけではありません。それでも、対馬の現状を知ってもらうことで、ごみの分別を進めるなど、海洋ごみの問題について考えてもらえるのではないでしょうか」
国際社会でも海洋ごみの問題については議論が行われている。新たな国際条約の策定を目指す動きもあるものの、今年8月にスイスで開かれた会議では合意が先送りになった。国家間の協力を呼びかけるためにも、漂着ごみの現実を対馬から発信することは、今後も重要な意味を持つだろう。
(「調査情報デジタル」編集部)
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














