「何もしてもらうことはありません」―被害者支援の警察官との出会い
事件の日に話を戻す。阪大病院で失意の中にあった夫婦のところに、大阪府警の被害者支援対策室の警察官2人がやって来た。2人は「酒井さん、手助けをします。よろしくお願いします」と言った。
(酒井肇さん)
「何かしてもらえるのであれば麻希のためにしてほしいと思いました。でも麻希は死んでしまったんです。『もう何もしてもらうことはありません』と、この2人に告げました」
司法解剖には随分時間がかかるため、酒井さんがその場に残り、妻は麻希さんが帰ってくるための準備をするために家に帰ることにした。するとこの2人の警察官が「私たちが送ります」と声をかけてくれた。
(酒井肇さん)
「今思うと、特に警察官でなくても良かったかもしれません。とにかく誰かに助けてほしかった。これから一体何がどうすればいいのか、どうなっていくのか。ちょっとしたことでもいいから、犯罪被害者になった後の行動について指示が欲しかったなと思います」
でもこのときは、具体的な答えをもらうことはできなかった。
事件が発生し、被害者やその家族、友人、知人、マスコミを含め全ての関係者が混乱に陥る。酒井さんはこの状況を”超混乱期”と名付けている。24年前に経験した”超混乱期”を経て、進む道を考えることになったのは、事件から3か月後経った、ある日の電話だった。
【part2】「怖かったよね、痛かったよね」現れた鮮やかな幻影に声かけた 血だまりと小さな手形に娘の最期の思いを知った日へ続く














