虫の研究は自然の研究

2020年公表の環境省のレッドリストでは「絶滅種」となった「キイロネクイハムシ」、一体、日本のどこに潜んでいたのでしょうか。

再発見した京都大学の曽田貞滋名誉教授に聞くと、「幼虫も成虫も水中生活する特殊な虫で、水質汚染を免れた水草群落が発達した限られた場所に生き残っていたということでしょう。大陸にも同種はいますが、遺伝子解析の結果から持ち込まれた可能性はないと考えています。私たちの再発見後も琵琶湖以外では見つかっていません」とのこと。

環境省の担当者も再発見の報告を喜んでいます。

「過去50年ほどの間に、信頼できる生息の情報が得られていなかったので2007年に絶滅種、つまり我が国ではすでに絶滅したと考えられる種と評価しました。もしそれが生息しているとなれば、喜ばしいことです。レッドリストの更新作業はこれからになります」

そんな不思議なことがあるのが自然の世界なんだと、養老さんは伝えたかったようです。

養老さん
「(私のやっている)虫の研究は根本的には日本の自然の話なんです。分かっているようで分かっていない。私は虫の研究・解剖学をやっていますけど、完全に自然の研究なんです」

養老さんは、虫などを通して、移り行く日本の自然を見つめてきました。今も絶滅の危機に瀕しているキイロネクイハムシを通して改めて思うことは…。

養老さん
「(キイロネクイハムシが住めるような水中の)環境がどんどんなくなってきている。皆さんは水の底を見ないと思うけど、藻が生える場所がなくなってきているのです」「水がダメになっている可能性が高い。農薬を使っていますから。地下水まで入っているかと思う。こういうのはダメって言ってもダメだし。しょうがないですね…」

キイロネクイハムシだけではありません。虫は全体的にも激減しています。

養老さん
「この30年で7割から9割、虫が減っています。世界中で。いろいろな事情があると思う。単純な因果関係では説明できないけど」

養老さんも薦めるデイヴ・グールソンの「サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」」には、ドイツの自然保護区で1989年から2016年までの27年間で飛翔昆虫の4分の3(76%)が減少したことを示す学術論文が紹介されています。

こうした生き物が減る理由としては、これまでにも農薬や化学物質だけではなく、開発や乱獲、里山の荒廃、気候変動などが指摘されています。

植物の受粉の多くは昆虫や虫をエサにする小鳥などが担っているので心配です。