前回MVPの太田が同じパターンでメンバー入り
髙橋監督が過去の優勝時と今年のチームを、次のような比較をしている。「自己記録やシーズンベストではなくて、駅伝の時点でロードを1人で走った場合の力を足し算したら、16年も19年も去年も、それほど強かったわけではないんです。1区から良い流れができて、選手たちが想定以上の力を出してくれました。勝つ手応えがあったのは20年大会だけでした」
昨年の優勝も1区から良い流れに乗り、4区のカロラインでトップに立った。しかし2位の積水化学との差は22秒で、5区の鈴木と6区の太田琴菜(30)の昨シーズンの実績を積水化学の選手と比べれば、逆転されても不思議ではなかった。だが鈴木が4km付近で追いつかれてから驚異的な粘りを発揮し、中継所には1秒先着した。それを見た太田のスイッチが入り、一度は積水化学に5~10mのリードを奪われたが、区間賞の走りで逆転した。
「1人1人を足し算したとき、去年のメンバーに勝っているとは言いませんが、見劣りはしないと思っています」(髙橋監督)
太田は昨年、故障があって廣中と同じようにクイーンズ駅伝がシーズン初戦だった。練習でも7番手の位置で、大会1週間前に6番目に上がったという。それでいて大会MVPにも選ばれるほどの力を発揮した。完全に想定以上だった。その太田は今年も7番手の位置にいたが、スタッフが18日の練習で菅田が外れる判断をして、6番手のポジションに上がって5区を任されることになった。
「太田は練習量が多い選手で、普段のポイント練習(週に2~3回行う強度の高い練習)で疲れもあるのか良くないんですが、最後に(練習量を落とすなどして)調整するとグッと上がって来ます。区間賞は無理でも、去年のような走りを5区で再現してくれたら面白くなりますね」
太田はできる限りの練習をしているので、ボーダーラインでもピリピリせず、「(選手選考は)あとはお任せします」という雰囲気の選手だという。鈴木も10月末に故障をして、メンバー入りは早い段階で難しくなったが、メンバー選考の最後の練習まで参加して諦めない姿勢を見せた。昨年まで10年連続出場し、日本郵政の1期生としてチームを支えてきた選手の姿勢に、チーム全体の気持ちが盛り上がったという。
髙橋監督は今年も「優勝は無理だと思う」と言うが、谷本のコメントにあるように、選手たちは優勝を諦めていないし、チームの雰囲気は良くなっている。昨年のような奇跡的な勝ち方が続くほどクイーンズ駅伝は甘くないかもしれないが、髙橋監督も「流れ次第で面白くなるかもしれません」と、1区の走り次第では望みを捨てていない。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















