矢田の意欲をより強くした世界陸上の経験

3区の矢田は残念ながら、世界陸上に向けて十分な準備ができなかった。沢栁監督によれば7月に足首を捻挫し、回復に約1か月かかったという。回復して本格的に練習を始めたところで新型コロナに感染してしまった。32分28秒94で20位。6位に入賞した廣中には1周抜かれてしまった。

矢田みくに選手

「日本代表として不甲斐なさと、悔しさが残るレースになりました。でもスタートラインに立ったとき、代表になるまでには練習の苦しさから逃げたい、と思うことが何度もありましたが、『ここに立つために陸上競技を続けて来たんだ』と実感できました。競技を続けていく上で軸となる大切なものができた気がします」

結果を出すことはできなかったが、世界陸上の経験が矢田を一回り大きくした。世界陸上後は練習も「大きな舞台に立つための苦しみと思えば、楽しいモノに感じられるようになった」という。3区への出場も、「長い距離を練習してきました。安定感も出てきたので、他チームのエースに食らいついて行きます」と意欲を見せる。

4区の中島紗弥(26)は矢田と同学年。矢田が高卒で他チームも経て、立命大卒の中島より5か月遅れて入社した。中島も学生時代に日本インカレ5000mに優勝した選手だ。「矢田がどんどん力を付けていくのを間近で見てきました。もちろん才能もあると思いますが、自分に必要な練習をしっかり考えて、自分を作っていく様子は参考になりましたね。誰にでも強くなるチャンスはあると、思うことができました」。

任されたのはインターナショナル区間の4区。「後ろから速い外国の方たちが来ることは当たり前。そこに怖さはありません。最大の力を出して細田さんにつなぎます」。不退転の覚悟で走る。