細田は区間賞の昨年よりも良い状態
5区の細田は3月の東京マラソンで2時間27分43秒で13位(日本人2位)、東京世界陸上代表を逃したが、前述のように7月の日本選手権5000mで自己新をマークして4位と好走した。8月のシドニー・マラソンでは2時間23分27秒で6位。27年秋開催予定のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。ロサンゼルスオリンピック™最重要選考会)出場権を獲得した。
沢栁監督も本人も、「ここまでの記録が出ると思っていなかった」と異口同音に話す。5年近く世界大会の選考レースに出場し続けて来たため(東京五輪は補欠代表)、「少し気楽に走りたい、と本人から申し出があったんです」と沢栁監督。「最長で30kmまで。40km走はやっていません」という練習だった。
しかし、練習のレベルをただ落としたわけではなかった。細田自身が「40km走はやっていませんが」と説明してくれた。「補強を多く行ったり、アップダウンを多く走ったりして筋力強化をしました。以前から上半身の動きが悪く、動きに左右差があることがケガの原因だと思って、肩甲骨から腕を振る走り方に取り組んできました。中殿筋などの支える部位もトレーニングをして、脚の外側のラインに張りが出なくなってきましたね。それらが(起伏の多い)シドニーのコースに耐えられた要因かな、と思っています」
駅伝に向けても故障がなく準備ができた。昨年も5区で区間賞を取っているが、「だいたい駅伝前にアクシデントがあって、万全の5区ではありませんでした。今年は練習が積めているので、“楽しみ”があるかもしれません」。3、4区でトップから30秒くらい後れても、今年の細田なら逆転するかもしれない。
そして6区は「主要区間の3人と同じ練習ができている」(沢栁監督)という平岡美帆(25)が、昨年に続いて任された。昨年は区間15位で、3位でタスキを受けたが5位に順位を落としてフィニッシュした。「私が順位を守れていたら、エディオンの過去最高順位だったんです。すごく悔しかった」と平岡は振り返る。エディオンは22年に1区の萩谷楓、5区の細田、6区の矢田が区間2~4位で走り4位に入賞した。
「この1年で妥協しそうになったとき、クイーンズ駅伝のゴール後の悔しさを思い出して自分を奮い立たせてきました。アンカーは一番走りたい区間ですが、一番怖い区間でもあります。でも、去年の分まで良い走りをすることで、自分自身の殻を破ることができる。やっとリベンジができます」
沢栁監督は「今年の平岡には、もらった順位を維持できる走りを期待したい」という。もちろんタスキを受けた時のタイム差で状況は変わってくる。5区の細田が1~3位で平岡にタスキを渡すことができれば、ハラハラドキドキの争いが繰り広げられる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
*トップ写真は水本佳菜選手

















