2区の西山でトップに立つ展開も

西山選手(25年5月撮影)

プリンセス駅伝では2区の西山が、区間賞の快走でトップに立った。クイーンズ駅伝でも2区は確定的で、「区間賞も狙える練習ができている」と鈴木監督も期待する。

西山は7月の日本選手権3000m障害に優勝したが、東京2025世界陸上代表には届かなかった。世界ランキングのポイントで日本選手権2位の齋藤みう(23、パナソニック)が西山を上回ったからだ。世界陸上の齋藤は9分24秒72と、17年ぶりに日本記録を大幅に更新する健闘だった。西山はその走りを国立競技場のスタンドで観戦した。目の前で齋藤の快走を見てショックを受けていた西山に、鈴木監督は「あなたも同じ記録を出せる練習はしていたよ」と声をかけた。

「世界陸上という大会や、大観衆の国立競技場の雰囲気もあって出せた記録だから、ここで走ったらあなたも出せるかもしれないよ、と。西山が出られなかったのは運もあってのこと。完全に差を付けられたわけではないから、破れないことはありません。世界陸上に出られなかった悔しさを、まずは駅伝にぶつけて、駅伝をステップに3000m障害で頑張ってほしい」

齋藤と同じ区間になる可能性は低いが、クイーンズ駅伝の西山は強い思いを持って走る。鈴木監督は2区の西山で一度はトップに立ちたいと考えている。

「できれば1、2区でトップに立ち、3区で少し後退しても4区のタビタジェリ(25)で、もう一度トップ集団に追いつくのが理想の展開です。タビタジェリは良い状態で来ているので、トップを走っているところを見たいですね。松田杏奈(31)も安定感抜群の選手なので、5区か6区でしっかり走ってくれると思います」。各区間の果たす役割についても、次のような話し方をしている。「3区と5区をエース級がしっかり走ることが必要な駅伝ですが、今回に限っては3区と5区は我慢の区間です。自分のリズムで走って、後れても差を最小限にとどめてほしい。残りの1、2、4、6区でしっかり勝負をしたい」。

プリンセス駅伝優勝後のインタビューで、鈴木監督は「私がイメージした区間配置ができましたし、選手同士もこの子が走ったら強いだろうな、という思いがあったと思う。その2つが一致したら力を発揮する」とコメントした。プリンセス駅伝とは上位チームの力が違うので、同じことが当てはまるわけではない。だから3、5区が我慢の区間になるわけだが、その状況でも三井住友海上は鈴木監督が思い描く区間配置ができ、選手たちも良い状態を作っているのは間違いない。

4区終了時にトップ集団をキープしている可能性は高い。あとは5区の選手が監督の想定を上回る走りをすれば、三井住友海上が最後まで優勝争いをする展開も見られそうだ。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)