夜空に透る激しい音響に心揺さぶられ

巣鴨版画集より「刑場に祈る」

刑場の入り口には、「13」と書かれた鉄の扉があった。田嶋教誨師は中に入る死刑囚たちを見送ったあと、刑場には入らず塀の外で待っていた。

<わがいのち果てる日に 田嶋隆純>
獄庭を歩きながら念仏を呟く人、低声に唱題する人、あるいはときどき万歳を叫ぶ人など、いろいろあったが、最後に刑場の入り口まで来ると、私はそこで停められ、刑場を囲む塀外の真っ暗なところで私の付き添い兵と共に待つ。行列はそのまま、私を残して刑場への扉をくぐって行く。暗闇に立つ私は妙ないい方だが、ただもう早く成仏してくれればと思うばかりで、夢中で真言を唱えていた。あるときなど夢中のあまり思わず声が大きくなっているのも気づかず、傍らの兵隊から庭向こうの囚棟を指ざされ注意を促されたこともあった。

いつの立ち合いでも、この自分の唱える真言の声で耳が塞がれていて、中に入った方々の声に耳を澄ますだけの心の余裕など全然持たなかったため、私は刑場に入った後の皆さんの動静については、ほとんど述べる資料を持たない。ただ塀外で別れてから、ものの二分も経たぬうちに、突然バターンと夜空に透る激しい音響でハッと胸を揺さぶられるのが常であった。

田嶋隆純教誨師