ルーキー対決と3000m障害対決

齋藤のクイーンズ駅伝は、見どころ満載と言っていい。まずは出走区間が何区になるか。チームの状況によって左右されるが、主要区間の1区(7.0km)、3区(10.6km)、5区(10.0km)のどこかを任されそうだ。1区であれば、クイーンズ駅伝では終盤の上りが難所として知られている。「大学駅伝のコースより過酷なレースになりそうですね」と気を引き締める。

最長区間の3区も、どんな走りができるかイメージしている。「直線がすごく長いので、前の選手との差が見やすくなります。しかし見えるからといって焦って追わず、自分のペースで押して行きたいです。最長区間ですし、焦らず自分の力を出し切るレースをしたい」。

どの区間になっても、同学年ルーキーの誰かと対決するだろう。日体大の同級生たち以外にも、10000m学生記録保持者の不破聖衣来(22、三井住友海上)、昨年の全日本大学女子駅伝優勝の立命大のエースで3区区間新を出した村松灯(23、ダイハツ)、名城大で全日本大学女子駅伝3連勝した谷本七星(23、JP日本郵政グループ)らとの同学年対決は注目される。

不破選手(三井住友海上)

「不破さんは、一昨年くらいまで自分の力もなかったので、雲の上の存在でした。山﨑と日体大で一緒に走ってこられたことは、私にとって財産です。今回は別のチームになって、どういう走りをするのか楽しみなところもありますし、同じ区間になったら絶対に勝ちたい。2人ともすごい選手ですが、そういう選手と戦っていけないと、3000m障害ももちろんそうですし、世界で活躍できる選手になれません」

3000m障害のライバルとの対決も、実現しないとも限らない。25年の日本選手権と全日本実業団陸上の2冠を達成した西山未奈美(25、三井住友海上)は、プリンセス駅伝2区で区間賞。自身では前半を少し抑えた走りをしたが、何人もの選手を抜き去った。クイーンズエイトで齋藤が2区(4.2km)に回ればハイレベルの戦いになる。日本選手権で転倒して2位と敗れている齋藤は「負けられないな、という気持ちもある」と意気込む。

日本選手権3位の西出優月(25、ダイハツ)、全日本実業団陸上2位の山田桃愛(24、しまむら)らも、3000m障害で力を付けている。齋藤の世界陸上の快走に、刺激を受けた選手たちであることは間違いない。主要区間に登場する可能性があるのは山田で、11月には5000mで15分33秒70の自己新と好調だ。齋藤と直接対決が実現したときは、来年のアジア大会3000m障害の代表争いにもつながっていく。

同学年選手や3000m障害選手との対決も意識するが、齋藤の一番の目標は「チームに貢献する」ことだ。

「会社の方たちに3000m障害で色々支援していただいています。その恩返しという意味でも、駅伝でチームに貢献したい。チームはクイーンズエイト、さらには3位以内まで目標としています。そのために区間3位以内で走ることが個人の目標です」

パナソニックというチームで走ることで、駅伝と3000m障害が1つのサイクルとなって、齋藤は成長していく。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)