8年半誰も笑わない家族
米村さんは事件翌日に警察に届け出ました。当初は家出捜索人として扱われ、本格的な捜査がされないと思われましたが、弁護士の友人の助けもあり、捜査が開始されました。その結果、わずか10日ほどで犯人が逮捕されたのです。
しかし、娘を失った家族の生活は大きく変わりました。
「事件に遭うと笑いがなくなるんですよ、家族の中で。もちろん、私たちは事件後22年経って前向きに生きようとしてます。ちょっとした笑顔もするし、明るい話もするし、前向きには生きようとしてるんですけど、なかなか普通の人みたいな前向きにはなれないんですね」
事件前は家族で夕食を一緒に食べるというルールがあり、みんなで一日の出来事を笑い合って話していました。しかし事件後はそれがなくなりました。
「8年半誰も笑わなかったので、私は自助グループに相談しました。『我が家は8年半誰も笑いません。何かいい解決策はありませんか』と。そうすると、私よりも1年前に交通事故で高校2年生の次男さんをなくされたお母さんがこう言いました。
「『米村さん、大丈夫。私の家は9年半誰も笑わないから』」
米村さんが今年6月に30人ほどの遺族に電話で聞いたところ、多くの遺族が「笑えていない」と答えたといいます。人前では笑顔を作ることはできても、心の中から笑うことができないのだと語りました。














