訪問のきっかけは中越高校からの“手紙”

選手たちと対面

部員たち:こんにちは!

イチロー:はじめまして、イチローです!

綺麗に整列した部員たちの前に立ったイチローさんは訪問のきっかけとなった、中越からの手紙について触れた。

イチロー:手紙は1月の終わりだったか2月の頭か。すごく思いの詰まった丁寧な、丁寧っていうかすごく優秀なんだなっていう印象でした。僕は(手紙を)見てから夏の甲子園に向けた予選もずっと見ていて、あのクーパーズタウン、殿堂入りの野球の聖地と言われる所だけど、クーパーズタウンでもみんなの試合を見ていたんです。

中越は今夏、甲子園の切符を手にするも、初戦で関東第一に敗れた。

イチロー:みんなが全国制覇を目指してる中で、関東一高との差っていうのはどうだったんだろうか。

部員:やっぱり甲子園を知っているなっていう印象が一番。

イチロー:なるほど。その1対6というのはスコア以上に差を感じたのか、それとももう少し近くにあったのか。

部員:自分はもっと点差が離れたような感覚はありました。

イチロー:あっという間に終わったでしょ。甲子園ってやっぱり強豪校、慣れた学校っていうのは、展開の仕方、ゲームの持っていき方を知ってるから。僕も高校2年の夏、天理高校(奈良)にあっという間に負けたんだけど。本気で全国制覇を目指すチームというのはどういうチームかっていうのを見てきているので。この2日間、時間も短いけれども一緒に練習することで、連合チームと練習試合をやるということで見させてもらいます。

連合チームの部員たちにも声をかけたイチローさん。連合チームは、糸魚川白嶺、柏崎常盤、新井、高田商、柏崎総合の5校混成。自分の高校だけではメンバーが足りず、週末などに集まって練習している。

目を輝かせる球児たちに挨拶をするイチローさん

イチロー:連合チームのみんなは、チームとしてプレーできないから何チームかが一緒になってプレーする。すごく難しいよね。結束力もなかなか生まれないし、モチベーションをどこに持っていけばいいのか分からない難しさもあると思うけれども。中越っていう新潟でもトップの一角である強豪校との時間はすごく大事な時間だと思うんで。挑んでいく気持ちを大事にして。みんなも今日何かあれば最後まで一緒なんで、ぶつかってきてください、もちろん遠慮なく。よろしくお願いします!

部員たち:(一礼して)お願いします!

イチロー:おぉ、いい声だね。

部員たちが元気よくウォーミングアップを始める中、思い入れのある球場を眺めたイチローさん。93年に放ったプロ初ホームランを振り返った。

スタッフ:32年前のホームランってどんなふうに残ってるものなんですか。感触とか景色とか。

イチロー:覚えているよ。とにかく真っ直ぐを振らなきゃやられるから、もうゴンって振っただけのことなんだけど。嬉しかったよ。嬉しかったけど、そんな味わいのあるものじゃないから。駆け引きの中で生まれたものじゃないし、野茂さんのフォークを打たない限り勝てないわけだから野茂さんには。勝負に勝っているわけじゃないんだけど、結果がそう出ただけの話。