ロジスティードも平林も新たな挑戦
平林が自社ホームページに記載した、もう1つの“ベストレース、または最も印象に残っているレース”が大学3年時の大阪マラソンである。2時間06分18秒で、当時の初マラソン日本最高(2時間06分45秒)と学生記録(2時間07分47秒)を更新した。さらに評価できたのは、そのレースで平林が優勝したことだ。近年の厚底シューズ普及で、初マラソン日本最高や学生記録は何度か出ているが、優勝した選手はかなり以前にさかのぼらなければいない。「あのレースを走ったことで、ここからマラソンにチャレンジしていきたい、という気持ちに変わることができました。学生駅伝だったり、カテゴリーの枠から出て、一歩前進できたレースです」。
しかし東京2025世界陸上代表を狙った今年2月の別大は、30kmでトップに立って仕掛けたが、35kmから大きくペースダウン。2時間09分13秒の9位と敗れた。「箱根駅伝もそうでしたが、かなり焦っていました。別大は代表選考もかかっていたプレッシャーもあり、早くに攻めてしまったと思います」とレース展開に問題があったことは認めている。だがそれよりも、箱根駅伝からの流れが良くなかったと感じている。「3年時の大阪マラソンは、箱根駅伝(2区で区間賞選手と19秒差の区間3位)を上手く使ってマラソンに良い流れで持っていくことができました。それに対して4年時は、箱根駅伝もプレッシャーとの戦いで上手く走れず、別大までの期間も大阪の時より3週間短かった。準備の大切さを学びました」。
しかしその経験があったから、マラソンで世界に挑戦する気持ちがより強固になった。平林のその気持ちを汲んだロジスティードが、國學院大の前田康弘監督の指導を卒業後も受けられることなど、平林が世界へ挑戦するために必要な環境作りをサポートする。ロジスティードとしては初めての強化スタイルだが、別府監督は自身が直接指導することよりも、どうしたら選手が強くなるかを考えて新しいシステム導入に踏み切ったという。
平林はロジスティードを選んだ理由を次のように説明する。「國學院大の前田監督とタッグを組んで、自分たちとしても新しい(世界への)挑戦ですが、ロジスティードとしてもチームの新しい挑戦と位置づけて、サポートしていただけることが大きなポイントでした。世界を目指すところを一緒にやれるチームです」。平林のアドバンテージは、大きな成功と大きな失敗を、すでにマラソンで経験していること。そしてその要因が駅伝も含めたトレーニングの流れの違いということも、明確になっている。東日本実業団駅伝は平林にとって、マラソンに結びつける流れを確認して行くスタートとなる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
 

















