「引っ張る力」が強かった「愛の、がっこう」

田幸 「愛の、がっこう。」(フジ)がよかったです。女性教師とホストの恋愛で、ホストの世界を描くというので最初は警戒して見た方もいたと思うんですが、盛り上がりという意味では今期一番でした。井上由美子さんは大ベテランだけあって、次を見たくなる描き方が上手です。

ラウールさん演じるホストは学校に行きたかったけど行けなかった人。いわゆる毒親で、彼にディスレクシア(識字障害)があることに親も学校も気づかないままで、自分の名前も満足に書けない。でもコミュニケーションは上手で、人の気持ちに寄り添える。

一方の木村文乃さん演じる教師は、過干渉の親に閉じ込められ、コントロールされて生きてきた。だから恋愛の仕方を知らなくて、恋人をストーカーしてしまったあげく死ねと言われて海に飛び込んで、勤めていた出版社を辞めて教師になった。

それぞれに欠けた者同士が出会い、木村さんはラウールさんに文字を教える。ラウールさんは、ずっとばかだと言われてきたけど、本当はばかじゃないんだと初めて言ってくれた先生を好きになる。先生は先生で、ずっと親のコントロール下にいたけれど、彼との交流で人の気持ちを考えるようになり、学校で無視されていた生徒たちともコミュニケーションがとれるようになっていくという、どちらも成長物語として描かれています。

社会の問題を描きつつも筋立てがすごく強いので、韓国ドラマにあって今の日本のドラマになくなっている「引っ張る力」がありました。尻上がりにどんどん盛り上がって、最終的にはすごくバズったドラマになりましたね。

そしてラウールさんの、ともすれば悪目立ちしかねない危うい華があるところを、木村さんが上手にバランスをとっていて、木村さんってこんなに上手な方だったんだと改めて思いました。

倉田 初めは女性教師とホストという組み合わせはどうかなと思いながら見始めたんですが、どんどん引き込まれました。

私は職業にとらわれてしまっているんだと思いました。どんな職業同士で恋愛してもいいのに、女性教師とホストの恋愛イコール禁断という自分の思い込みに気づかせてくれた面もありました。

木村さん演じる教師は結局学校を辞める形になって、生徒にさようならも言えずに一旦は去ります。しかしその後、教室ではなく体育館で最後に生徒たちに会うシーンがあるんです。その場で生徒たちが木村さんにどんどん文句をぶつけるんですね。気持ちとしては学校を辞めてほしくない、でも文句をぶつけるというシーンに感動して、泣きそうになりました。

影山 僕が注目していたのは、木村さんの父親役の酒向芳さんです。あのキャラはすばらしい。酒向さんが出てくるとワクワクする、そういう存在でした。