走るメニューでは30km変化走が、本番の走りをシミュレーションするのに有効だった。変化のつけ方は無数にあるが、小林は以下の組み合わせ方で行っている。

1km:ジョグ
3km:レースペース
2km:レースペースより1km30秒前後落とす
[この3km+2kmを5回繰り返す]
3km:レースペース
1km:ジョグ

今年1月の大阪国際女子マラソン前も行ったメニューであり、同大会では日本人1位で2時間21分19秒と快走した。タイム設定は選手の力と、そのときの状態で判断するが、その設定が指導者の腕の見せどころだろう。前田穂南(29、天満屋)が日本記録の2時間18分59秒を出した時も行ったメニューで、大阪前の小林は前田と同じアルバカーキ(米国の高地トレーニング場所)で行ったが、前田よりも低めのタイム設定で走っていた。

前田よりスピードを抑えて行っても、当時の小林は実業団チームのポイント練習(週に2~3回実施する負荷の大きい練習)を行い始めて1年も経っていない。小林にはすごい練習と感じられた。大阪のレース後には「30km変化走が一番キツく感じました。そのときの達成感は、自信につながったとは思います」と話していた。

東京世界陸上に向けての30km変化走は、長野県菅平で行った。大阪前が冬だったのに対し今回は夏。コースもアルバカーキが平坦なのに対し、菅平は起伏が激しく小さな曲がり角も多い。タイム設定は大阪前より低めで走った。面白いのは30km変化走の手応えが、河野監督と小林でまったく異なること。