経験不足の小林が大塚製薬のノウハウで夏のマラソンにも対応
河野監督は99年に、日本人初の2時間6分台(2時間06分57秒)を出した犬伏孝行(現大塚製薬総監督)を育成したことで、若手指導者として注目され始めた。細川道隆(現大塚製薬男子部監督)、伊藤を男女マラソン代表に育てる一方、日本陸連スタッフとしても手腕を発揮した。
東京オリンピック™以降のマラソン五輪選考システムとして、複数レースで力を発揮する力を見ながら一発選考の性格を持つMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)が行われているが、その骨格を考案したのも河野監督である。小林が今回行ったトレーニングは、長年の指導経験やネットワークで蓄積したノウハウから、小林の特徴を見ながら選択した。
暑熱馴化の1つの方法として、ヒートルームを活用した。長野県の高地トレーニング拠点の湯の丸で、「8~10畳くらい」(河野監督)の部屋を気温32度、湿度75%くらいの状態にして、1時間ジョグを4回実施した。日本陸連科学委員会が推奨した方法で、昨年のパリ五輪男子マラソンで6位に入賞した赤﨑暁(27、クラフティア)も行っていた。
レース中の暑さ対策としては、帽子に氷を入れ、全ての給水所で日本チームのスタッフが手渡しした。帽子のつばには保冷剤を貼り付けていた。小林はその保冷剤か、誰でも取れる給水所の氷を握って走っていた。「自分の場合、何かを握っている方が上手く力が入ります」(小林)