■消えゆく「横町の風呂屋」


「♪二人で行った横町の風呂屋 一緒に出ようねって言ったのに...」


“南こうせつとかぐや姫”の「神田川」の歌にも登場するなど、かつて庶民に身近な存在だった「銭湯」です。

その日本の文化の1つとも言える銭湯が、いま姿を消しつつあります。利用者の減少、さらに原油価格の高騰が追い打ちをかけているのです。


岡山県内の入浴料金は、きょう(12月1日)3年ぶりの値上げとなりました。「苦しい状況でも明かりを消してはいけない」と営業を続ける1軒の銭湯を訪ねました。

■番台に座り続けて60余年 禮子さんの毎日


「痛くない方から、よいしょ…」

1メートル四方にも満たない番台。この場所に座り、客を迎え続けて数十年になります。


「ここで編み物をするんよ。これ見て、可愛いじゃろ」


岡山市北区下伊福上町。ディーゼル列車がときおり走る、JR吉備線・備前三門駅のそばにある「東湯」です。


創業60年以上、優しい温もりが多くの人の心身を癒してきました。重ねた日々は、施設のいたるところに、年輪のように刻まれています。

■入浴料金上限額は12月1日から430円から20円引き上げ


11月29日、男湯に最初のお客さんがやってきました。仕事が休みの日、早い時間にやってくるのが楽しみだ、という常連です。


(客の男性)
「あさってからまた値上げじゃな。450円になるんじゃな。あさってからじゃろ、値上げするのは」


(東森禮子さん)
「入りゃあええ」


東湯も加入している、公衆浴場同業組合からの要望を受けた岡山県は、12月1日からの入浴料金の上限額の引き上げを決定。大人は20円上がって450円になりました。

■「苦しい...」それでも親から受け継いだ番台を守り続ける


両親から引き継いだ東湯で、番頭を続けている東森禮子さんです。


(東森禮子さん)
「これがお母さんです。お母さんの歳を超えたよ、私」

(記者)
「禮子さんはおいくつ?」

(東森禮子さん)
「言えない、歳…」


営業開始前の午前11時。


ボイラーのスイッチを入れ、一日無事で営業できますように、と手を合わせる東森さん。湯を温めるのに欠かせない「重油価格の高騰」に悩まされています。


(東森禮子さん)
「そりゃ油は上がるし、何もかんも上がっとろう」

(記者)
「値上げをしないとやっていけない?」


(東森禮子さん)
「苦しい…」