“ママアスリート”寺田明日香選手の挑戦

「7人制ラグビーをやらないか」と誘われたのだ。

寺田選手
「チームのトレーナーにうまく口説かれて…じゃないけど、『俺も一緒に頑張るから、お前試しにやってみろ』みたいな感じで。軽い感じで言ってくれたので、私も軽い感じで『わかりました』って。怖さとか、重圧感とか責任感とか皆無のなか始めた」

背中を押したのが、娘・果緒ちゃんの存在だった。

寺田選手
「親がやっているところを見てもらえたら。別に彼女がスポーツをやらなくても、本当に特別な思い出、何か残るものがあるんじゃないかと思って。果緒がいなかったらやっていないかな」

本格的なトレーニングを再開すると、トップレベルのスピードを買われ、日本代表の練習生に選ばれた。「ラグビーなら、オリンピックに行けるかもしれない」、闘争心に火がついた。

だが、現実は甘くなかった。当時、果緒ちゃんはまだ2歳。日々の練習に加えて合宿も多く、月に5日しか家に帰れない時もあった。育児を、夫や義理の母に任せることが増えた。

寺田選手
「ママ行ってくるね。チューは?」

夫・佐藤峻一さん
「果緒、バイバイって」

果緒ちゃん
「ばいばい」

寺田選手
「行ってきます」

家を出ると、抑えていた想いがあふれてしまう。

寺田選手
「母親になると涙もろくなるんですよ。昨日、保育園を見に行ったんですけど、めっちゃ泣いちゃって」
「いつもこんな感じです。まだちょっと後ろ髪をひかれる感じで出て。1人でポロポロ泣きながら電車に乗ってる時もあるので。彼女より私の方が寂しいかもしれない」

そんな中、峻一さんがSNSに投稿した1枚の写真が波紋を呼んだ。疲れ切って床に倒れ込んだ寺田選手の姿に、知り合いの男性から厳しいコメントが。

SNSのコメント
「自分より子どもを優先してほしいと思います」
「子どもは頑張っている姿がわかる年齢ですか?」
「母親の愛情と別の人の愛情は同じですか?」
「なんのためにオリンピックに出るのですか?」

寺田選手
「やっぱり傍からみると、『子どもを置いてやる意味があるのか』と思う方ももちろんいらっしゃると思うので。そういう『母親がいないとダメだろ』って思ってる人たちにも、『そうじゃないんだよ』っていうことを伝えていけたらなというか。中途半端で全部やってないよってことを見てほしいなとは思います」