魚雷を兵士が操縦し、敵艦などに体当たりする人間魚雷「回天」。戦争を経験した人が減っていく中、その歴史を芝居で語り継ごうとする人たちがいます。

山口県周南市の小さな離島・大津島。かつて、人間魚雷「回天」の訓練基地がありました。

兵士が魚雷を操縦し、敵艦などに体当たりする特攻兵器「回天」。搭乗員はわずかな情報を頼りに暗い海の中を進み、およそ1.5トンの爆薬とともに全速力で敵艦へと突っ込みます。

1年弱の回天作戦で搭乗員106人の命が失われました。平均年齢は20.9歳でした。

当時、基地の近くに住み、6歳のころ、訓練や出撃の様子を見てきた田中賢一さん(87)。

田中賢一さん(87)
「よく分からないけど何か感じていた。大津島基地にはおそらく帰れないんだろうと」

教員となり、独自に回天について調べ資料をまとめる中で、人々の心を戦争へと向けた「教育」の恐ろしさを痛感したと言います。しかし、当時を知る人は年々減っています。戦争の記憶、そして教訓をどう伝えていくか。

先月、東京である舞台の稽古が行われました。回天をテーマにした「あゝ大津島碧き海」。役者は全員、戦争を経験してはいません。しかし、回天の搭乗員を演じ、回天の歴史と接する中で、次の世代にこの事実を伝えていこうという思いも生まれました。

回天搭乗員を演じる長谷川慎也さん
「二度とこういうことがあってはいけない。すごく感じてほしいですね」

舞台をプロデュース 若林哲行さん
「戦争を知らない人間が、戦争のことを未来につないでいくのが1番大事」

今月、訓練基地のあった山口県周南市で上演。回天の故障により出撃できなかった男性が当時を振り返る中で、海に散っていった若者たちの心情を描いています。戦争を知らない世代が芝居を通して戦争の悲惨さを伝えました。

観劇した高校生
「人が乗って特攻するっていうのは非人道的、これ以降、あってはならない」

「戦争を繰り返してはならない」。この思いは次の世代にも確実に引き継がれています。