石破総理の参院選は自民党の大敗でした

獲得議席が47と、非改選の議席と合わせても与党の過半数割れとなり、自民党の大敗となった今回の参議院議員選挙。
続投の理由としていた日米関税交渉も合意に至り、党内からは石破総理の辞任を求める声が上がり続けています。では、以前の参院選での自民党大敗後、ときの総理大臣たちはどのような判断をしたのでしょうか。

自民党結党以来初の参院過半数割れとなったのは…　「明鏡止水の心境だ」

1989年7月23日、宇野宗佑が総理大臣を務めていたときの参院選で、自民党は結党以来初の参議院過半数割れとなる獲得議席36と大敗を喫しました。

宇野総理は用意したメモを胸ポケットから取り出し、それを読み上げつつ辞任会見を行いました。近年、総理の会見ではプロンプターを使用していることが多いので、こういった光景もあまり見られなくなりました。

リクルート事件で総辞職した竹下登内閣のあとを継いだ宇野内閣でしたが、リクルート事件の影響、その年の4月に導入された消費税、農産物の輸入自由化問題が逆風となりました。
しかし、それと同じかそれ以上に問題となったのが宇野総理の女性スキャンダルでした。

リクルートコスモスの未公開株が賄賂として譲渡されたリクルート事件によって辞職した竹下内閣のあとを継いで誕生した宇野内閣。サミットが近かったこともあり、外相であった宇野宗佑に白羽の矢が立ちました。

土井たか子委員長率いる日本社会党は女性候補を多数擁立する、女性を意識した選挙戦略を打ち出し46議席を獲得、“マドンナ旋風”と呼ばれました。女性の社会進出がそれまでよりも進み、以前までであれば容認されてしまっていた政治家の女性スキャンダルはすでに許されない社会となっていました。

相手女性が宇野のような人物が総理大臣であってはならないと自らメディアで詳細を語りました。はじめは週刊誌報道のみで、新聞・テレビでは報じませんでしたが、外国メディアが報じたことにより国内でも問題化。複数の女性団体から抗議の声が上がり、そういった動きも社会党の躍進につながりました。

選挙翌日の24日、宇野総理は会見を行い、敗北の責任をとり辞任すると表明しました。大敗は自身の女性問題の影響ではないのかとの質問に「私は一切の責任をとると申しているのだから、それでおわかりいただけると思う」と明言は避け、今の心境を聞かれると「明鏡止水の心境だ」と告げ会見を終えました。結果、宇野内閣は総理就任期間が69日という短命内閣となりました。

宇野総理時代の自民党幹事長は橋本龍太郎でした。開票速報を見ながらタバコを吸い「また（票差が）開いたか」とつぶやく場面は現在との喫煙環境の違いで幾度かメディアで取り上げられたので、見覚えがある方も多いのではないでしょうか。宇野総理、橋本幹事長ともに表情・発言が印象的でした。