クマの人身被害「14年連続ゼロ」の場所
人間とクマの距離が近づく中、どうすれば被害を防げるのか。取材班が向かったのは長野県軽井沢町。1990年代から2000年代前半まではクマによる被害に直面してきましたが、2011年以降、人の生活エリアでの人身被害は14年連続でゼロだといいます。
「実被害はないですね。(Qゴミが荒らされたりとか?)昔はね。今はゴミ箱にカギがかかるようになっているので」
「被害はあんまり聞かないけどね。『あの人たち』が管理してくれている。だから軽井沢はクマの被害はない」
街の安全を支えている『あの人たち』、それは「ベアドッグ」によるパトロールです。ベアドッグはクマの匂いや気配を察知するために特別な訓練を受けた犬。パートナーの指示に従い大きな声で吠えクマを追い払います。
実際にクマと遭遇した際の映像には、パートナーが前方を指し示しながら「ベア!ベア!バーク!(クマだ!クマだ!ほえろ!)」と叫び始める様子が。ベアドッグが大声で吠えると、クマは木からおりて森の奥へと逃げていきました。
このベアドッグを訓練しているのはクマとの共存を目指すNPO法人「ピッキオ」。ピッキオは捕獲されたクマの一頭一頭に発信器などをつけて個体管理をしていて、その情報をもとにパトロールをします。
(NPO法人ピッキオ 井村潤太さん)「クマの位置を特定しているスタッフがいて、『きょうはよくない場所にいる』と連絡があれば、そこに行って森のほうに追い返す」
対策は「追い払い」だけではありません。軽井沢町では1990年代までは年間130件ほどクマによるゴミ箱荒らしがありました。クマが生ゴミを求めて人のいるエリアに近づいてきていたのです。
そこで行ったのが「クマ対策ゴミ箱」の設置です。
(NPO法人ピッキオ 井村潤太さん)「構造としてはカバーがありまして、内側にレバーがありまして人であれば指も長いので奥まで入れてレバーを引くことで開閉ができる」
今ではクマによるゴミ箱荒らしはほとんどありません。
追い払いをするだけではなく、そもそも街へ呼び寄せている原因を断つことが人間とクマの共存のためには大事だといいます。
(NPO法人ピッキオ 井村潤太さん)「駆除が必要なクマもいるかもしれないが、必要ないのであればわれわれの頑張りによってお互いが命をつなぎながら共に同じ地球で生きるというのは非常に重要だと思っています」