ーー自分たちの声を代弁してくれる人がいないとなると、政治への関心も低くなりますよね。
ですから、この最終的な結論がどうなるか分かりませんが、一線を超えてしまうと危険なのではないかと思います。要はギリシャ神話などで言われる「パンドラの箱」だと思っています。これを開けてはいけませんよというのを開けてしまった、手にしてしまった、そういうことにもなりかねない危うさを感じています。有権者からすれば自分が投じた一票で候補者が決まったり、大きなテーマに対し自分の一票が反映されて世論が形作られたり、そういった達成感や実感があって、選挙や政治に対して関心を持つことがあると思うんです。それが例えば、自分の県で、こういう審判を下したいけどその対象がいないとか、野党を支持しているけど与党と野党が部分的に連合する、何らかタイアップするとなると、有権者が投票で政治的なアクションやプレッシャーをかけられるという思惑が働かなくなってしまう。そういう意味でも危うさを感じますね。
ーー選挙の勝ち負けも大切だと思いますが、それ以上に自民党の人たちには有権者のことを大事にしてもらいたいなという気がしますが。
予定されている投票日、7月まで3か月をきるなかで、まだ候補者を立てていないということは現実問題、厳しくなっていると思います。今回の参院選挙を乗り切るということだけではなくて、中長期的に日本の政治はどうなっていくのか、構造的にも深刻な問題になっています。投票率もずっと下がっています、上がっていません。そういうことに対して、もっと大きく構えてもらいたいなと感じています。
ーーちなみに1人区32あるうち、ほかにも候補者を立てないような選挙区は出てきそうか?
一応、他のところは全て揃いました。可能性が全くゼロということはありませんが、個別にみていくと今回は自民党、宮城の候補が正式に決まりましたが、元々は野党の候補として議員になって勝ってきた人を自民党で登用するということなんです。プロ野球でいうと、相手方の主力選手がこちらに来て活躍するという、FAのようなものです。私、野球が好きなので、そういった状況をみていると若干、複雑な気持ちを感じます。ですから自民党は今回、現実的に勝ちに行く、あるいは大負けしないという戦略なのかなと感じます。
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後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長
小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書
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