肉球の仕掛けやリアルな動線…“見つけてほしい”があちこちに

火曜ドラマ『初恋DOGs』より

羽染氏が「ぜひ見つけてほしい」と語る、遊び心あふれる仕掛けの1つが、床やスロープに散りばめられた“肉球”の模様だ。ほんの少し浮き出るように加工され、動物病院の外に設置している肉球はぼんやりと光るようにもなっている。「既製品のライトをそのまま使うのではなく、オリジナルで仕込みました」とこだわりを明かす。

さらに、動物たちの入院室や診察動線にも細やかな配慮がなされている。有藤先生の監修のもと、大型犬のためのスロープを設置するほか、犬と猫の待合スペースを左右で分けるなど、実際の医療現場に即した設計が採用されている。

この構造には、国際猫医学会(ISFM)が定めた国際基準による規格「キャットフレンドリークリニック(CFC)」も意識されている。これは猫のストレスを軽減し、安心して治療を受けられる環境を整備することを目的とした取り組みで、実在の動物病院でも導入が進められている。

「待合室では、受付に向かって左側が犬用、右側が猫用のスペースになっています。劇中では犬の登場が多いですが、猫はキャリーで運ばれることが多いので、猫側は少しコンパクトに。入院室も、犬とそれ以外の動物とでフロアを分けているんです」と羽染氏。2階には猫や小動物専用の入院施設も用意されており、“24時間体制の病院”として、細部までリアルな設計が施されている。

リアルとフィクションの“ちょうどいい交差点”を探して

火曜ドラマ『初恋DOGs』より

スタッフの働き方にもリアリティを持たせるため、セット内はフリーアドレス制という設定に。個人のデスクがない分、小物や装飾はランダムに点在させ、散らかり過ぎず、でも無機質過ぎない空気感を演出。「働いている人の人柄が、置いてあるものからにじみ出るようにしたかった」と語る。

動物のリアルな置物も、造形作家による協力で設置された。「人の病院ではない動物病院として見分けがつくように、大きめで印象的なものを選びました。実際に動物がいなくても、“ここは動物のための場所だ”と分かるように」(羽染氏)。

火曜ドラマ『初恋DOGs』より、 成田凌、 ナ・イヌ

ドラマの中の世界を超えて、現実の動物病院が持つ温もりや使命感を体現する「しろさき動物病院」。動物と人、その暮らしを支える場として、全国にあるさまざまな病院でも、現場では日々工夫や情熱が注がれている。