ガラス張りの設計に込めた、“すべてがつながっている”感覚

診察室、入院室、処置室、スタッフルームなど、病院の各空間はガラスで仕切られている。特にスタッフルームは“司令塔”のような位置づけで、1つの空間から全体を把握できるよう設計されている。「どこで撮影していても、全部が見えるようにしたかった。壁にすると閉鎖感が出てしまうので、どの角度からも画になるように、なるべく抜けを作ったんです」と羽染氏。
ただし、診察室だけは例外。実際の動物病院ではあまり見られないからだ。監修を務める日本動物医療センターの獣医師・有藤翔平院長と何度も打ち合わせを重ね、ガラス張りでもプライバシーに配慮できるようブラインドを設置した。「診察室をガラスにしていいのか心配だったのですが、“ブラインドで目隠しできるなら、いいと思いますよ”と確認をいただけたので、映像とリアルのバランスが取れたと思います」。

待合室の“木”に込めた、里親への思いと遊び心

吹き抜けの待合室の中央に立つ、シンボリックな「木」。枝には、里親募集中の動物たちの写真がつるされている。羽染氏は「実際の動物病院を見学させていただいた時に掲示板に貼ってあったのを見たのですが、吹き抜けの空間を生かして、真ん中に飾ったら面白いんじゃないかと思って」と話す。
この木は、動物病院のロゴに描かれた木をモチーフに、特殊造形で制作されたもの。劇中では、写真が話数ごとに変化したり、里親が決まった動物の写真が外されるといった演出も盛り込まれている。「セットだけど物語と一緒に変わっていく感じを出したかった」と語る通り、単なる背景美術ではなく、ストーリーに寄り添う“演じるセット”となっている。