■「ミスをしても謝らない…」スタッフの育成にも苦戦

スイーツ店のオーナーになったことで直面した中国ならではの難しさもありました。

「店舗の契約更新時に突然テナントを追い出されてしまったり、新店舗の内装工事が全て終わった段階で当局から違法建築だと指摘され、投資したお金がすべて水の泡になるなど、中国ならではの予測不能な事情によるトラブルも経験しました」

なかでも大変だったのは、中国人スタッフの教育でした。

「スタッフを育てても、育ったと思ったら辞めてしまい、なかなか定着しないのが悩みの種でした。最初はスタッフのプロ意識を育てようとミスをしたスタッフを叱ったりしていましたが、開店から5年ほど経ったときに叱るのをやめて、冷静にアドバイスをするように変えてみました。プライドが高い中国人スタッフはミスをしたときに謝罪はしませんが、内心では『失敗してしまった』と反省しているのがわかったからです。少しずつ中国人スタッフとの関わり合いを学ぶうちに、今では信頼できる中国人のパティシエも育ち、店を任せられるほどに信頼関係ができました」

Booth’s cake現在の店舗

■“ケーキがおいしいと知らない中国人に日本のケーキを広めたい

開店当時の10年前に比べると、北京でもスイーツ店は増え、日常的にケーキを食べる中国人の数も多くなりました。今後の展望を聞いてみると…

「目の前のやりたいことを必死に頑張りたいので、なるべく将来の展望は考えないようにしているのですが…」

と前置きをしながら、こう話してくれました。

ケーキがおいしいということすら知らない中国の人に、もっと日本のケーキのおいしさを広めたい。将来的には観光地や繁華街に店を出して、普段あまりケーキを食べない中国人にも日本のケーキのおいしさを知ってもらいたいです。そして中国にもっと日本のケーキファンを増やしたい。それが今の目標です」



また、最後に森田さんは海外で挑戦することを考える人たちに向けてメッセージを送りました。

海外では日本人というだけで特別な存在になり得ます。僕は中国に来てたくさんの出会いとチャンスがありました。海外を考えている方は是非一度挑戦することをお勧めしたいです!

森田さんの北京での挑戦はこれからも続きます。

(JNN北京支局 室谷陽太)