都議選に出馬した在日コリアン3世 日本国籍取得も「朝鮮人」とののしられ…

選挙に立候補し、ヘイトスピーチの被害にあった人がいる。
韓国にルーツを持つ、金正則さん(70)。
金正則さん
「(子どもの時)憲法をみると国民の中に自分は入ってなかった。でもこれだけ立派な言葉、前文を出す憲法なら、選挙権をいつかくれるだろうと」
かつて植民地だった朝鮮半島から祖父母の代に渡ってきた在日コリアン3世だ。
日本で生まれ、東京に住んで50年が経つ。韓国国籍だったため投票権は無く、選挙に参加したことはなかった。
金正則さん
「日本語しかできないし、生まれたところがもう本当に自分の故郷」
だが、外国にルーツを持つ人たちを取り巻く状況は悪くなる一方だった。

危機感を抱いた金さんは、アイデンティティのよりどころでもあった国籍を変えることを決意。2年前、日本国籍を取得した。
金正則さん
「このままではダメだなという思い。少しずつでも社会を変えていかないといけないなと。国籍を変えて被選挙権を行使する。都議選に出たのはそういう経緯です」
6月、都議会議員選挙に立候補した。
金さんのプロモーションビデオ
「差別や格差のない東京をつくる。その入口を開けます」
だが、選挙戦の中で、金さんが標的にされた。
きっかけのひとつが、同じ選挙区の候補者が開いた会見だ。同席した埼玉県戸田市の河合悠祐市議が、金さんを「当選させてはならない」と発言した。
埼玉県戸田市 河合悠祐 市議(河合氏のYouTubeより)
「売国奴ともいうべきリベラル的な候補者がいます。ちゃんと日本人を優先すべきです。外国人以上に日本人を大事にしてください」
金さんの選挙事務所のスタッフは、この会見以降、攻撃がさらにひどくなったと話す。

選挙事務所スタッフ 谷口岳さん
「リプライほとんどがヘイトスピーチ。『帰化人が立候補するな』とか。河合悠祐(市議)が発信すると、それに同調してヘイトスピーチがたくさんぶらさがるという状況。
『金正則が立候補するのは、外国人のために何かをやろうとしている』『日本人のために立候補したんじゃない』と、そういう言説がとてもたくさんあった」
選挙事務所スタッフ 加古晴子さん
「きつかったのは、通りすがりの人たちの差別的な言動。『帰化しても朝鮮人だろう』『在日』という言葉を吐き捨てていく、それが怖いなと思った」
選挙戦の終盤になって、金さんたちは抗議声明を発表したが、嫌がらせは続いた。

抗議声明を発表した2日後に撮影された映像には、金さんが演説する予定の場所を離れない男性がいた。
金さんに対し、差別発言を繰り返す河合市議が所属する政治団体の事務局長だ。
加古さんと谷口さん
「お願いします。お願いしたいんです。帰ってほしいとお願いしたいんです」
男性は警察にうながされ、その場を離れた。
金さんは、自分への攻撃が、ボランティアスタッフたちにも向けられたことに、胸を痛めたという。
金正則さん
「私だけじゃなくて、応援してくれてる人たちがチラシを配っている時に『在日か』とか『朝鮮人は』というような属性を語るヘイトですよね。そういうものを受けたのが自分の想定外だった」
結果は落選だった。

金正則さん
「(在日外国人は)税金を納めてきて、それに対して選挙権というものがない。その状態を日本の人たちに知ってもらう。まだ知らない人も多いと思うが、それが大きな意義だった」
金さんは70歳になって初めて、路上で「朝鮮人」とののしられたという。
社会の空気が悪くなっていることに、絶望感を覚えたと話す。
金正則さん
「日本国籍を取った時に『あなたには選挙権があります』『与えられました』と書かれてあった。それなのに帰化というジャンルで差別が行われている。国籍をとった人間に対しても、そういう風に排除を行っていく。全く何を考えてるかわからないくらい、めちゃくちゃな話だと思っています」

















