「“選挙ヘイト”を許さない」…“読書会”という形で差別に抗議する人々

今回の参院選の政見放送では、特定の外国人を名指ししたヘイト発言がそのまま放送される場面があった。

埼玉県選挙区 日本改革党 津村大作 候補 
「知能指数の低いクズ中のクズです。このようなクズには生きる権利はどこにもない」

明らかに人格を攻撃する内容が続いたが…

公職選挙法では政見放送は「そのまま放送しなければならない」と規定されている。

埼玉県の選挙管理委員会によると、この候補者に対し収録したNHKを通じて、「場合によっては差し控えたほうがいいのではないか」などと伝えたが、本人が内容を変えることはなかったという。

選挙運動の自由を利用して公然と差別的な発言をする、“選挙ヘイト”を警戒する人たちがいる。

神奈川県の川崎駅前で読書する人たち。彼らは「読書会」という方法で差別と戦っている。

高畠修さん
「差別主義者がここでヘイトスピーチをするのを監視しています。そういう連中が来た時にはすぐ本をたたんで、プラカードを持ってヘイトスピーチやめろと言う活動をしている」

川崎市は10年前、在日コリアンに対するヘイトスピーチが大きな問題となった。

川崎市で行われたヘイトデモ(2015年~2016年)
「お前ら生きてる資格ねぇんだよ。馬鹿この野郎」

多くの在日コリアンが暮らす地域を狙って繰り返されたヘイトデモ。その矛先を向けられた子どもたちまでもが、デモの中止を訴えていた。

多くの日本人が抗議に加わったことで、デモを追い返すうねりが生まれ、ヘイトスピーチに罰金刑を課す条例にも結び付いた。“差別への戦いが社会を変える”ことを多くの人が経験したのだ。

高畠悦子さん
「当事者を矢面に立たせては本当はいけない。でも立たざるを得なくなってしまっている。私たち日本人がやれることをやらないと」

しかし、いまだにヘイトは無くならない。

差別的な街宣が行われるとき、抗議する人たちは、太鼓やサイレンを鳴らして対抗する。ヘイトが向けられる当事者たちに、発言を聞かせないようかき消すためだ。

ただ、選挙の演説の場合には選挙妨害の罪に問われる可能性があるため、肉声やプラカードで対抗するしかないという。

読書会の参加者
「連中が選挙を使ってヘイトをやる。ヘイトをされる在日コリアンの人たちのほとんどが選挙権を持っていない。そんなやり方は卑劣」

読書会の参加者
「『日本人ファースト』ってなんでしょうね?他の人を押しのけて日本人だけが良ければいいなんて、そんなこと言っている場合じゃないと思う」

読書会後、参加した人たちは候補者の演説の前でもプラカードを掲げた。

高畠修さん
「公人たる市会議員、県会議員、国会議員も含めて差別をしてはいけない。にもかかわらず、どんどんそれがはびこっている。そういう社会を作ってきたのは有権者である僕たちの責任、それは絶対に許せないと思いますね」