関税交渉の切り札になる?
再び動き始めた壮大なLNG開発プロジェクト。
現在の計画では2026年からパイプラインの建設が始まる予定だが、取材した涌井記者は、「事実上見切り発車の色合いが強くなっている」と話す。

ワシントン支局長・涌井記者:
「プロジェクトを主導する会社は、まずアンカレッジまで天然ガスパイプラインを作り、アラスカ内部の需要に応える第1期工事をし、その後2期工事で港まで繋ぐパイプラインを作ると説明している。なので外国の協力なしでも建設を始められると言っているが、海外に輸出することも前提に第1期・第2期という予算を描いているので、見切り発車してから日本も韓国も入ってきてね、という展開が予想される」
ーー難航する日米関税交渉の切り札になるか。

涌井記者:
「日本政府としては現在アメリカ全体からLNGの輸入を増やすことはすでに提案しているが、アラスカの開発に特化して話をしているわけではない。政府としては、もう少し慎重に時間をかけて判断したいが、今後、関税合意の中でLNGはおそらく入ってくる。そのときにトランプ氏が念頭に置いてるのはアラスカだと覚悟して話を進めないといけない」
米国メジャーも“撤退した”プロジェクト
1977年から経産省米州課長などを歴任した細川昌彦さんも、このプロジェクトは「曰く因縁」があると話す。

『明星大学』教授 細川昌彦さん:
「アラスカのLNGのプロジェクトは、80年代、私が現役の時からあった。当時、エクソンなどアメリカのメジャーも参画しようとしたが採算が全然取れないと撤退し、ずっと引きずってきた案件。そういう曰く因縁があって、じゃあ韓国・日本・台湾に頼むよと来た。なのでメジャーがちゃんと参画した上で、日本も協力できるということではないか」
ーーただ、日本としてはLNGが欲しい。同盟国で距離も近い。事業費の分担などが合理的な範囲になれば、積極的にかかわっても良い案件に思える。
細川さん:
「エネルギーの安全保障上プラスにはなるが、大事なことはコスト。台湾や韓国はガス公社なので税金投入がボンボンできる。片や日本は民間企業なので、巨額の負担ができるか。高い物を引き受けて電力料金に跳ね返るということになりかねない。日本が国費を投入してまでやる覚悟あれば別だが、そうでなければ台湾などと歩調は合わせられない」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年7月5日放送より)