■ロシアがモルドバを第2の侵攻対象に?

モルドバはソ連崩壊に伴い、1991年に独立していますが、前の年にはロシア系住民が民主主義政策に反発し、東部で「沿ドニエストル共和国」の独立を一方的に宣言。モルドバとの間で武力紛争に突入しました。「沿ドニエストル共和国」は、国際的に国として認められていませんが、現在もロシア軍が駐留しています。

複雑な背景があるモルドバですが、EUへの加盟を目指していることから、ロシアがウクライナと同様、住民の保護を理由に第2の侵攻対象にするのではないかという懸念も出ています。親ロシア派が多いコムラトでは、ウクライナへの侵攻を支持する声が目立ちました。

国山キャスター:
ロシアがウクライナにしていることは正しいと思いますか?

コムラトの住民(親ロ派・女性):
ロシアは正しいよ。ここはロシア、ソ連だった。他の人にも聞いたらいい。私が住んでいたのはソ連、私の家はここソ連にある。モルドバがなんだ!ルーマニアが何だ!

国山キャスター:
ウクライナの子どもたちもたくさん亡くなっています。それに関してはどうですか?

コムラトの住民(親ロ派・女性):
自分たちで殺しているんだ、端から全員。小さな子どもから白髪の老人まで関係なく全員、パンパンパンパンだ。

別の住民は。

コムラトの住民(親ロ派・女性):
8年間、プーチンは平和交渉を望み続けたが、なぜかゼレンスキーは交渉を後回しにしていた。今の戦争はロシアが始めたのではない。ロシアが始めたと思わないでほしい。

■“偽情報キャンペーン”避難民のヘイト動画も

親ロシア派の住民が多い地域が複数あり、政府は軍事侵攻が始まって以降、ロシアの一方的な情報が広まらないよう対策に乗り出しています。

国山キャスター:
モルドバのテレビを見てみますと、EU加盟に向けたニュースが放送されています。親EUのチャンネルということなのですが、1つチャンネルを変えてみると、これは親ロシア派のチャンネルです。元々はこういったチャンネルで、ロシアの国営放送が再放送されていたということなんですが、戦争が始まって、それは禁止されています。

しかし、情報の規制には限界があり、いまロシアが関与しているとみられる偽情報キャンペーンが深刻になっているといいます。偽情報を監視するシンクタンクで、その実態を聞きました。TikTokに上がった動画を見てみると。

「ウクライナの避難民を泊めてあげたのに、わがままで文句ばかり」

避難民への批判を口にする女性。

偽情報とみられる投稿
「気に入らない食べ物は床に投げ捨てるし、新しい布団や枕がないのかと要求してくる。嫌なら自分の国に戻って好きなように暮らして」

別の動画でも。

偽情報とみられる投稿
「ウクライナ人はモルドバに来ただけでなく私たちの金で暮らしている。ただで食事をして感謝もしない」

避難民へのヘイトを煽るような動画がSNSで次々と拡散されているのです。

偽情報を監視するシンクタンク
「こうした動画の制作者に何十人も連絡を取り話を聞いたが、実際には誰一人、自分が経験したことではなく噂について話をしていた」

投稿の多くはロシアやブルガリアなど国外のアカウントからシェアされ拡散していて、ロシアによる組織的なキャンペーンだと指摘します。

国山キャスター:
ロシアの狙いは何だと思う?

偽情報を監視するシンクタンク:
プーチンが求めているのは、旧ソ連の国々が自分の影響下にあり続けること。ロシアの遠隔地としてロシアの一部であることを求めている。

別の専門家はこう警鐘を鳴らします。

モルドバの記者団体:
(投稿画面を見ながら)この人は教会の神父だが『ウクライナの戦争は正義の戦争。神が命じた戦争だ』という投稿もある。モルドバの田舎の人たちは、こういうことを信じてしまう。

モルドバでは、これまで約40万人の避難民を受け入れてきましたが、こうした偽情報は、国内の深刻な分断を生み出すおそれがあると指摘します。

モルドバの記者団体:
モルドバは残念なことに社会的にも政治的にも昔から分断されている国だが、この戦争でさらに分断が深まる可能性がある。