荷台には、大きなクレーンの部品が積んでありました。


乗っていた運転手に、「すみません…」と声をかけます。

動揺している様子を隠さないまま取材に答えてくれた運転手によると、クレーンの部品は、道路脇の歩道の方に転落したといいます。


そして、「歩道に人がいなかったのが…幸いでした」と声を絞り出しました。

なぜ、こんなことになったのか…。

運転手は、「道路沿いのコンビニからトラックが出てきて、急ブレーキをかけたら荷が落ちてしまった」といいます。

運転手
「固定はきっちりやってたんですけど、急ブレーキを踏んでしまって…。(固定は)ある程度がっちりはしめたんですけど、あんまりやり過ぎるとこんどは部品の方が変形してしまうんで…。そうですね…急ブレーキかけない方が良かったのかな…という感じではあります…」


取材に対し警察は、「固定などの措置はとっていて転落防止措置義務違反にはあたらず、物損事故として処理する」とこたえました。

私は、トラックがコンビニの駐車場から国道に出やすいよう、後続の車のタイミングをみて待ってもらい、見送りました。


決して事故を起こそうと思っていたわけではなく、混乱もしていたであろう中、取材に答えていただいた姿勢に、敬意を表したい気持ちがあったからです。


しかし、それと同時に、想像もしました…。

転落したクレーンの下敷きになった人がいたら、こんなことでは済まなかっただろう。巻き込まれる人の人生を一瞬で奪い、しっかり答えてくれたあの運転手の人生も、その家族の人生も一変しただろう。事態によっては、テレビニュースやネット記事で毎日報じられることにもなっただろう。今回どころじゃない、一生の後悔をしただろう。

続報をニュースで報じる作業をしたのち、松本さんに連絡します。

記者(メッセージ)
「あわや大変な事故になるところでした。続報をあげたのでお知らせします」

松本さん(メッセージ)
「物損事故で終わって本当に良かったです。安全管理の大切さが良く分かる事故です」

それにしても10年です…。というか、事件や事故で大事な人を失ったり、傷つけられたりした人は、何年たとうが、関係ない…。改めてそう気づかされました。