松本さんは、今でも、似たような事案を聞いたり、場面を見たりすると、フラッシュバックするといいます…。

松本さんは、事故に巻き込まれた遺族の思いを伝える活動を続けています。


運転前の確認や心構えなどで、事故のリスクは十分減らせることを知っているからです。


6日は、広島市内の自動車学校「ロイヤル ドライビングスクール広島」で、教習にあたるスタッフを相手に講演に臨みました。


松本さんは、康志さんをいつも通り見送りそれが最後の生きている姿だったこと…、案内された救急治療室でストレッチャーに寝かされていた心臓破裂の康志さんの顔色は青紫で全身傷だらけガラスまみれだったこと…、冷蔵庫にはクリスマスに食べるはずだったケーキが残っていたこと…を話しました。


「事件」は、松本さんと、当時18歳と17歳だった子どもの普通の日常を奪い去ったのです。


松本里奈さん
「加害者側はやり直すことができる…。でも被害者、特に命を失った被害者はやり直しができません」
「被害者側と違って、加害者になるかならないの選択は、自分自身で行うことができます」


松本さんは、真剣な表情で聞き入る自動車学校にスタッフたちに、ハンドルを握るということがどれだけ責任を伴うことなのかを、これから免許をとる人たちに話していってほしいと伝えました。


来月12月25日…。

「事件」の発生から、10回目のクリスマスがやってきます。


松本里奈さん
「10年がたつ今も、本当に変わりません。むしろ、時間がたつにつれて、現実ではないような思いのほうが強くなっています。事故の直後は、私も死んだ方が楽になると毎日、毎日思っていました。そこから抜けて生きていけているのは、この思いから解放されることは生きている間はないんだなと自分自身で悟った時からです。この苦しみから解放されるのは、私自身が死んだとき…。それまでは、この思いを一生抱えていかなくてはならないんだと分かった時から、前向きに生きていけるようになりました」

誰も加害者にも、被害者にもならないように…。松本さんの思いです。

(RCC報道制作センター 増田み生久)