焼け残った根元から再生した「双子くす」

爆心地から西に約500メートル。城山国民学校では、校内にいた教師と三菱兵器製作所の動員学徒ら130人以上が犠牲となった。

校舎裏の「平和坂」の上り口にあるクスノキは、被爆前は1本の大きな木だったが、原爆で折れ焼失。

焼け残った根元から2つの新芽が吹き、80年かけ、2本に分かれた木に成長した。「双子くす」と呼ばれている。

サウンドデザイナー・清川さん「もともとは一本だったんですね」

♪城山町・城山国民学校のクスノキの音(動画を再生し、耳を澄ませて音をお聴きください)

プロジェクトには学生たちも参加していて、アシスタントや映像記録を務めている。

九州産業大学 芸術学部 芸術表現学科 4年 松尾 怜 さん(東京生まれ福岡育ち)「生命の力強さみたいなのは、もう しみじみと伝わりますね」

九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科 2年 轟 はなの さん(熊本出身)「被爆者の方は、いつか語り継ぐことはできなくなるけど、被爆樹木に触れて、聴いて、見て、それで平和を語り継ぐという考えが私にはなかったので、すごく教授の考えに感銘を受けて」

この日は、一日がかりで「被爆樹木」と、指定の基準からは外れるものの被爆当時からあった木、合わせて9本の音を収録した。

爆心地から約2.4キロの本蓮寺。

被爆後の火災で3日間燃え続けた鉄輪樹は、見事に甦った。

本蓮寺 山田 浩文 住職「(芽は)出ないだろうと言われた後に出てきましたから、みんな喜んでですね。まぁるくなります。とても優しい木のような」

♪筑後町・本蓮寺の鉄輪樹の音(動画を再生し、耳を澄ませて音をお聴きください)

サウンドデザイナー・清川 進也さん(48)「ゆっくりと意識をそこ(音)に向けて初めて聴くと、色々な気づきが実はそこにあったと。没入するということは、つまり、自分事にできるものになってくるんだと思うんですね」

九州産業大学 芸術学部 ソーシャルデザイン学科 伊藤 敬生 教授「被爆樹木を通じて何を皆さんに想像してもらえるのか。その先に、大きいテーマである戦争とか平和といったようなところまで、どうそれを自分の中に取り込めるのか」

80年前、被爆樹木たちは何を見て、何を聞いたのかー。

その「声」に耳を傾け、被爆当時のことを想像する「きっかけ」をつくるプロジェクトが進められている。

♪山王神社の大クスの音(動画を再生し、耳を澄ませて音をお聴きください)

伊藤教授らは、今回収録した音をもとに音楽を作り出し、今後インターネットで公開する予定だ。

また、「音」だけでなく、嗅覚や触覚など様々な五感を通じて被爆樹木と向き合うためのプロダクト作りも行っていて、平和について考える新たな手法として注目される。