ウクライナの戦争で進む土壌汚染

土壌が失われる原因には、戦争もあります。「戦争が起こる場所は元々、土が肥沃なところが多い。歴史的に見ても、土地の奪い合いが紛争の原因の一つとなってきました」と藤井さんは説明します。

現在進行中のロシアによるウクライナ侵攻の戦争も例外ではありません。ウクライナは「ヨーロッパのパンかご」「世界の食料庫」と呼ばれる農業大国としても知られます。その肥沃な土は「チェルノーゼム」(ロシア語で「黒土」)という名前で、「土の皇帝」という異名も持ちます。1万年以上前の氷河期に、氷河が削った肥沃な砂がたどり着いたのがウクライナでした。砂と粘土のバランスがよく、土壌に腐植やカルシウムを多く含んでいます。

しかし、戦争によってこの肥沃な土の汚染が進んでいます。ミサイルの部品には鉛など重金属が含まれており、これが高温状態で土壌に降り注ぎます。藤井さんは「粘土に強くくっついた重金属は実験室では除去できますが、広大な畑全体を浄化することは現実的に不可能なのです」と語ります。

また、戦争中に地雷が埋められ、そもそも土地に人がアクセスできなくなるという問題もあります。「土をよくしていこうという取り組みは平和を前提としているので、こうした現状は辛いものがあります」