土は人類を支える「宝」

「人類史700万年のうち、農業をしてきたのは最後の1万年だけ。それまでは狩猟採集の生活を送ってきました。でも、それ以前から私たちは猿の仲間の中でも特に土と深く関わってきたのです」と藤井さんは指摘します。

チンパンジーやゴリラは栄養の少ないアフリカの赤土に実るフルーツを食べて暮らしていたため、種の繁栄が制限されました。一方、人類の祖先は比較的、肥よくな東アフリカで増殖しました。こうした土との関わりの中で、人類が1万年前に農耕というイノベーションを実現したといいます。

藤井さんは、「宝」という言葉自体が田んぼの「田から」に由来する説があることを紹介しながら、日本の田んぼの土壌が持つ力について語ります。「田んぼに水を張ると、鉄とリン酸がくっついて5ナノメートルほどの小さな『宝石』(ビビアナイト)ができるんです。これが徐々に溶け出してイネに栄養を供給する、すごく良い鉱物なんです」

ただし、この宝石を取り出すと酸素に触れて鉄サビに戻るのだとか。残念…。