「相互関税10%・品目別25%」で成長率試算
また、USスチールの話が日米関税交渉と相まって出てきている点も重要だ。
矢嶋さんも播摩卓士キャスターも、石破総理とトランプ氏の電話会談は「日鉄の話だった」とみている。
ーー米国への投資が増えることが、関税交渉を合意に導く1つのポイントでもある
矢嶋さん:
「やはり自動車関税が日米交渉の一番のポイントだと思うが、そこでも日本がアメリカで投資をしているというところが鍵になる。その一つの案件として日本製鉄の2兆円以上の投資は、ディールに使えるものすごく良い材料」

日本の対米輸出では(2024年度・財務省「貿易統計」より)
▼【自動車】⇒28.6%で6兆1919億円
▼【自動車部品】⇒5.6%で1兆2081億円
自動車関連の就業人口は558万人で、25%の追加関税が長く続けば日本経済にとって大きなダメージになるというシミュレーションも出ている。

【日本の実質GDP成長率】
※相互関税10%、自動車など品目別関税25%の場合
▼2025年4-6月期⇒マイナス成長
▼その後少し伸びるも、伸び率は低く「何かショックが起きればすぐにマイナス成長になる」(矢嶋さん)
▼2025年度の成長率は0.3%と予測
(内閣経済社会総合研究所資料よりニッセイ基礎研究所作成)
ーーつまり自動車関税25%が続くと、日本経済は2025年もゼロ成長になってしまうと

矢嶋さん:
「日本経済の下期で色んなことが多分悪い方向に変わるので、日米交渉上<品目別の25%>を受け入れるわけにはいかないと。最近のアメリカの中国やイギリスとの交渉を見ると、相互関税はどうも10%以下には下がらない。自動車もイギリスは下がったと言っても10%。そうすると日本の目標観をどこに持っていくのかが交渉での本丸の話になっていると思う」
賃上げ好循環は「崩れる」
ーー関税の時期や率によっては、これまでの【賃上げ好循環ストーリー】が完全に崩れる可能性もあるか
矢嶋さん:
「崩れると思う。企業の経営から考えると、先がわからないので設備投資をちょっと待っている状態。関税がこのままだと恐らく設備投資をやめてしまう。その後に従業員の賃金を今までみたいに払うことは難しくなるよねとなって、夏場以降はコメントが変わってくると思う。好循環の流れが少し止まるリスクは非常に高くなってる」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年5月24日放送より)