米・自動車所管閣僚と“自宅会談”で成果は?
そして日本時間23日の夜中から始まった“ベッセント財務長官”不在の関税交渉。
赤沢大臣は、ラトニック商務⻑官、グリア通商代表と相次いで協議した。

赤沢大臣:
「今後6月のG7サミットの機会のありうべき日米首脳会談の接点も視野に、閣僚間で緊密に協議をしていくことになった」
ベッセント財務長官抜きでも訪米した【今回の会談の意味】はどこにあるのか。
ワシントン支局の涌井文晶記者によると、
「19日から4日間行われた〔事務レベルの協議〕をいったん〔閣僚レベル〕にあげ、認識の共有や課題のあぶり出しの狙いがあった」という。

では、【自動車関税での打開の兆し】は掴めたのだろうか?
涌井記者:
「自動車を所管するラトニック長官が今回、赤沢大臣を“自宅に招いて“会談したことで距離を縮める機会になった可能性はある。ただトランプ政権はイギリスに対して自動車関税を10%に引き下げる10万台の枠を設けたことも、“特別扱いだ”と明言しているので、今後の交渉も難しい状況が続くと見られる」
赤沢大臣は30日にも再び訪米し、ベッセント財務⻑官と協議する方向で調整している。
“勝利アピール”を計算?USスチール買収「承認」か
関税のもう一つの焦点である鉄鋼をめぐっては、日本時間24日朝にトランプ氏が【日本製鉄によるUSスチールの買収】についてSNSに投稿。

<これはUSスチールと日本製鉄の間で計画されたパートナーシップであり、少なくとも7万人の雇用を創出し、アメリカ経済に140億ドル(約2兆円)を追加するものだ>
投稿には明確に日本製鉄による買収を認めた表現は含まれていないが、
日本製鉄は「ご英断に心より敬意を表する。米国鉄鋼業、さらには米国製造業全体にとって画期的な転機となるものだ」とコメントを発表した。
少なくとも肯定的な【結論に至った背景】には何があったのか。
ワシントン支局の涌井記者は、24日時点ではホワイトハウスからの正式な発表はなく、日本製鉄が求めていた完全子会社化を認めたかなどは明かではないとしたうえで、「トランプ氏にとって『勝利だ』『成果だ』とアピールできる結論にいたった」とみる。

涌井記者:
「投稿では<USスチールはアメリカに留まる>とも綴っているので、『買収は認めない』としてきたこれまでのスタンスを大きく変えない範囲で<少なくとも7万人の雇用><140億ドルの経済効果>とアピールできる形になったと判断したのではないか。トランプ氏は30日にはUSスチール本社があるピッツバーグで集会を開くとも表明していて、選挙で毎回激戦州になるペンシルベニア州の労働者にアピールできる材料になるという計算もあるとみられる」
日鉄のUSスチール買収を巡っては
▼米・大統領選の真っ只中に、トランプ氏が先にネガティブなコメントを出し
▼バイデン前大統領が追いかける形で、国家安全保障上の懸念を理由に中止命令
▼3月にトランプ氏が政府の「外国投資委員会」に審査のやり直しを命令。委員会は21日までに審査を終え結果をトランプ氏に報告していた。
一方、今回の結論は「日鉄の粘り勝ち」と評価するのは、金融・日本経済を中心に調査研究する矢嶋康次さんだ。

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー矢嶋康次さん:
「元々この買収案件はアメリカにとっても良い話だったと思うが、政治的に二転三転し元々の大筋に戻ったということ。買収がうまくいくかわからないという見方は結構あったが、胆力というか粘り強さが日本製鉄にはあった。最初に言っていた話を長期的に戦略的に進められたというのが今回の勝利を産んだのではないか」
ーー投資もする、雇用も続ける。アメリカの鉄鋼業が復活し、高性能の自動車用鋼板がアメリカで作れるようになるかもしれない。これは鉄鋼も自動車もアメリカで作れということとマッチする
矢嶋さん:
「トランプ政権が言っている目標・課題を全部クリアしてる話なので非常にいいことだと思うが、日本サイドから見ると140億ドル(約2兆円)の投資はどうなのか…?というところは逆に今後色々な評価が出てくると思う」