シラスを活用した製品を開発も、限定的な利用にとどまる
鹿児島県は工業試験場において昭和26(1951)年からシラスを工業材料に使う研究を進めてきた。工業試験場は現在の鹿児島県工業技術センターに統合されている。
工業技術センターでは、シラスを使った釉薬、煉瓦、吸音材、ガラス繊維など、さまざまな活用法を模索。30年以上研究に携わる主任研究員の袖山研一さんも、シラスを砂の代わりに用いて軽量化と大型化を実現したシラス瓦を開発したほか、軽石を用いて透水性と保水性を活かした、畜舎の床や屋外の緑化などに使えるシラスブロックも製作した。
ただ、シラス瓦やシラスブロックはある程度利用され、評価も得られたものの、消費地から遠いハンデもあり、全国に大きく展開するまでには至っていない。莫大な埋蔵量と主成分の火山ガラスを活かした産業化としてはまだまだ不十分といえる。
実は、火山ガラスが結合材になる可能性は、研究者の間では以前から知られていた。
1900年以上前に建設され、鉄筋のないコンクリートのドーム建築として世界最大を誇るイタリア・ローマのパンテオン神殿では、コンクリートの材料に火山灰が使われている。火山灰に含まれた火山ガラスの成分が、水酸化カルシウムと化学反応することで結合材として機能し、しかも長期にわたって耐久性があることがわかっている。
日本国内でも前述の通り、明治の頃から火山灰やシラスをセメントの代わりに使う研究が進められてきた。しかし、シラスは火山ガラスの純度が低いため利用されてこなかった。
工業技術センターでは、火山ガラスを焼成発泡させたシラスバルーンの開発に取り組んでいた。シラスから火山ガラスを取り出そうと、地元のベンチャー企業であるプリンシプルと共同研究を進めていたものの、高純度の火山ガラスの分離はなかなかうまくいかなかった。
「あるとき、プリンシプルから『コンクリート用の砂の代わりにシラスを用いているが使いにくいので、シラスから結晶質の砂を分離できないか』と言われました。それで、なんとしてもシラスの成分を分離しなければと、あらゆる方法を探しました」(袖山さん)














